宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

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地球からの呼吸を感じる-「いぶき(GOSAT)」

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宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

「だいち」の観測データは、どのような形で活用されるのですか。

「だいち」には、「地図作成」「地域観測」「災害監視」「資源探査」という4つの大きなミッションがあります。

まずは「地図作成」ですが、「PRISM」のセンサは2.5mの分解能をもち、モノクロ画像を取得するというお話をしましたが、この2.5mの分解能は国土地理院が出している2万5,000分の1の地図に必要な精度に合わせています。「だいち」は高度700kmの上空を一定の速度で南北に定期的に飛び続けており、航空機よりも幅広い、東西約70kmの幅を観測することができます。それほどの幅があれば、新しい道や橋ができたといった情報も一度に取得することができます。住宅地造成など、土地開発などがどんどん進むところでは、地図も頻繁に更新する必要があります。そのため、衛星画像が「地図作成・更新」にも活用されているのです。

次に、「地域観測」における身近な一例としては、お米が美味しいかどうかを人工衛星で判別するという試みがあります。どの産地のどの品種のお米が美味しいかということではなく、実は同じ地域のなかでも、美味しいかそうでないか、微妙な違いがあるそうです。もちろん人工衛星がお米を味見しているわけではありません。稲に当たって跳ね返る、ある波長の赤外線の強度をとらえることで判別をします。その赤外線の強さを解析することで、お米のタンパク質の含有量がわかるそうです。タンパク質は栄養価も高く優れているのですが、炊くときに水分の吸収を抑える働きがあるといわれ、炊きあがったときに粘り気を抑えてぼそぼそしてしまうそうです。一般的に日本人は粘り気のあるお米を美味しいと感じるようですので、タンパク質の含有量が少ないほうが、美味しいお米だとされる傾向があります。

そこで、まずはある地域を人工衛星で一度に観測します。農家の方々は、自分が育てている稲の品種や成長状況を把握しているので、美味しいと評価されているお米のタンパク質の含有量を基準に、ほかのエリアではタンパク質が多いか、少ないかという分布図を作成します。そして、美味しくない地域と美味しい地域の土壌調査を行い、比較をするのです。その内容を踏まえて、翌年は土壌改良や肥料の調整がなされます。それが広がっていくことで、美味しいお米の収穫量が全体的に増えることにつながるというわけなのです。


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