株式会社学習研究社

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ホタルを通じた環境意識-「ほたるキャンペーン」

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株式会社学習研究社

「酸性雨調査キャンペーン」を始めたきっかけはどのようなものですか。

1980年代後半から1990年代にかけて、酸性雨は新しい環境問題としてクローズアップされるようになりました。それに伴い、「6年の科学」でも環境記事についての特集をしました。その内容は酸性雨とゴミ問題、地球温暖化などです。この記事について大きな反響があり、そのことが、子どもたちが酸性雨や大気汚染調査を手軽に行える実験キットの開発を大きく後押しすることとなり、1993年に第1回目の全国を対象とした「酸性雨調査キャンペーン(※)」につながりました。

(※)「学研サイエンスキッズ」を参照。

「酸性雨調査キャンペーン」の実験キットとは、どのようなものですか。

弊社の「学習」「科学」シリーズは、本と教材という構成になっています。その教材にさらに「プラスα」という形で、「酸性雨調査キャンペーン」の実験キットをお配りしました。「6年の科学」に付いていた実験キットは、試薬を入れて「㏗(ピーエイチ)」を測るというものです。小学校の高学年からということで、「6年の科学」で試験的に始めてみました。そして2年目以降は順次、全学年を対象に実験キットを教材にしました。ちなみになぜ教材に「プラスα」という形にしたかというと、これを教材として扱った場合、キャンペーンを行う期間中は全学年同じ教材になってしまうという問題があったからなのです(笑)。

小さい容器に雨水を取り、その中に試薬を1滴入れて、色の変化によって㏗を測ります。㏗が低いと黄色系、高いと青系の色というように変わります。試薬によってそれぞれ色が変化する領域があるため、3種類の試薬を混ぜるといった工夫を行っています。また試薬を子どもたちが舐める、目に入れてしまうといった危険も考えられるため、安全性を考えた試薬を使っています。

「酸性雨調査キャンペーン」の実験キット

調査を行って、分かったことはありますか。

酸性雨というのは一時的な変動があるものの、年々その数値が改善してきていることが分かりました。ここ数年では、全国の平均値が酸性雨とは呼べないくらい改善してきています。その理由には工場の脱硫装置の発達、自動車の性能アップなど、社会全体が環境に配慮するようになってきていることが挙げられます。

このように日本では改善しているのですが、中国の環境汚染によって汚れた空気が風に運ばれることで、日本に影響を与えるという可能性が出てきました。それによってまた酸性雨の地域が増えるかもしれません。以前ニュースで蔵王の樹氷の形が変化しているということが取り上げられていましたが、その雪を調べて見ると、中国から運ばれてきた塵が混じっており、酸性化しているということが分かったそうです。

酸性雨の調査結果については、「日本酸性雨地図」という形でインターネット上で公開しています。

調査を行う上での苦労点はありますか。

子どもたちに環境問題に気付かせることを第一に考えて、難しい調査というよりは、身近なところから環境問題を知るように工夫をしたことですね。夏休みの自由研究の課題に使っていただいて、子どもたちが何かを感じることができればという思いがあります。

「酸性雨調査キャンペーン」は、今後どのように展開していくのですか。

事情により昨年をもって「酸性雨調査キャンペーン」を中止することになりました。残念ではありますが、十数年続けてきたこともあって、十分なデータを取ることはできたのではないかと思います。


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