三菱電機株式会社 :: 後編

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素材として家電製品に再利用できる高純度プラスチック

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三菱電機株式会社 :: 後編

再生プラスチックは、どのような製品に使われているのですか。

2012年に9,000t超もの混合プラスチックを処理したと述べましたが、そのうちの5,000tほどはマテリアルリサイクルとして回収されています。さらに、そのうちの2,400tほどを当社の製品に使っています。もう一度家電製品に使える高い品質レベルでリサイクルを行う、家電から家電への「自己循環リサイクル」という当社独自の取り組みによるものです。

例えば、当社のルームエアコン製品「霧ヶ峰(※)」では自己循環リサイクルプラスチックを使用しています。プラスチック部品のうち、20個以上は自己循環リサイクルプラスチックで製造しており、2010年製品より継続的に使用しています。

※2012年モデルのMSZ-ZWとZXVシリーズに適用。

自己循環リサイクルプラスチックを使ったルームエアコン「霧ヶ峰」のモデル

使用する部品の大きさが年度ごとに異なるので、自己循環リサイクルプラスチックの使用率は変動するのですが、ルームエアコンではおおよそ10%から15%で推移しています。

また、冷蔵庫(※)でも冷気吹き出し口などに自己循環リサイクルプラスチックを使用しています。冷蔵庫の場合、白物家電と言われるように白い部品が多いため、PPを選別回収した後に、白い材料のみを集めるという色の選別を行います。

※2012年モデルのMR-JXとRシリーズに適用。

自己循環リサイクルプラスチックを使った冷蔵庫のモデル

実は、リサイクル材における最大のネックは色なのです。製品ではさまざまな色のプラスチックを使っているのですが、それらが混ざってしまうとグレー系統の色になってしまいます。そこで、CCDカメラを搭載した色選別装置によって選別を行います。選別したうえで、冷蔵庫であれば食品を保存することを考慮し、食品に触れない部分に限定してリサイクルプラスチックを使用しています。

例えば、冷気吹き出し口でも扉を開けた正面の部分は食品に触れる恐れがありますので使用するのを避け、食品の収納容器が別に設けられている引き出し扉の奥の冷気吹き出し口などに使っています。このような工夫により、自己循環リサイクルプラスチックの使用率は13%から15%ほどを占めています。

ほかにも、冷蔵庫のドレンパン(水受け用の皿状の盤)や食洗機の下部カバー(水受け)、掃除機(※Be-Kシリーズ)の部品の一部などにもリサイクルプラスチックが使われています。先ほど約5,000tのうちの2,400tほどを当社の製品に使っていると述べましたが、その残りは一般の再生市場で売られています。意外なところでは、電気自動車のインパネ部分にもこのリサイクルプラスチックが使用されています。

一般に売られているリサイクルプラスチックと比較して、当社のリサイクルプラスチックはX線による臭素含有物質除去をしっかり行っているということで、高い評価をいただいております。

高純度プラスチックリサイクル事業のスタートの背景には、「家電リサイクル法」の影響があるのでしょうか。

家電リサイクル法の施行が2001年であり、ハイパーサイクルシステムズの事業開始が1999年です。ハイパーサイクルシステムズは、家電メーカーがつくった最初のリサイクルプラントなのですが、家電リサイクル法の施行以前に設立しています。

高純度プラスチックリサイクル事業のスタートの背景には、同じく1999年に事業を開始したグリーンサイクルシステムズが影響していると言えます。グリーンサイクルシステムズでは、当初はOA機器(※主にコピー機)のリサイクル事業(産業廃棄物処理業)を行っていました。家電リサイクル法に先行し、当社の環境事業がスタートしていたのです。

一方、家電リサイクル法では、処理責任がメーカー側に帰属することが明確に定められました。よりレベルの高いリサイクルを目指してプラスチックのリサイクル技術開発を推進する背景となったのは確かです。産廃事業に対しては一定のアプローチをしていたことと、より高度な技術開発を目指す法的背景、それらが一緒になって現在のような展開が実現したと考えています。

リサイクルプラスチックというと、純正のものと比べて強度的な問題があるように思われるのですが。

家電製品でのリサイクルプラスチック利用を開始したころは、それほど“市民権”を得られていなかったのだと思いますが、有識者の方々からは「プラスチックは劣化するもの」などと言われていました。

プラスチックでできたバケツなどを屋外に放置しておいたら、直射日光でボロボロになってしまったという経験をした方もいるかと思います。PPのベースレジンは紫外線には弱いのですが、家電に使われているプラスチックは、30年程度は耐えられるような処方を施しているため、劣化については問題ありません。

また、プラスチックは石油でつくられるため、鉄がさびるのと同様に、時間が経つと表面が酸化するという問題もあります。油が劣化するとアルコールや酸に変化してしまうのと同じですが、それによってプラスチックの表面が酸化するのです。ただし、これはごく薄い表面にすぎません。

実際には、リサイクル材の物性が落ちるのは、ゴムのような異物が混入してしまう、複数の種類のプラスチックが混ざってしまうなどのケースです。純度の高い回収を行い、異物等の除去も十分に行えば、物性を取り戻すことが可能です。そこで、強度・耐久性・耐薬品性を含めて、リサイクル事業において新材と同等の品質になるような仕組みを構築したわけです。

一般論になりますが、確かにプラスチックは劣化するものです。それを10年から20年以上も品質を維持させるには添加剤が欠かせません。製品が使用済みとなりリサイクルされる際にプラスチック部品として形や強度が残っていれば、添加剤は機能しているわけです。このとき、十分な追添を行えば、さらに20年以上利用可能な耐久性を取り戻すことができます。

また、プラスチックは金属が触媒となって劣化しやすいという性質があるので、金属を不活性化させる添加剤を一緒に投入しています。このように、微量の金属が混入しても劣化しにくいリサイクル材特有の添加処方の研究開発により、十分な耐久性を持つリサイクルプラスチックをつくることができました。


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