三菱電機株式会社 :: 後編

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素材として家電製品に再利用できる高純度プラスチック

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三菱電機株式会社 :: 後編

今回の「エコなニュース」は、ルームエアコン「霧ヶ峰」などでおなじみの三菱電機株式会社様の取り組みをご紹介。

前編に引き続き、後編では「大規模・高純度プラスチックリサイクル事業」や「レアアース磁石の回収事業」の取り組みについてお聞きします。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。

リビング・デジタルメディア技術部 リサイクルシステムグループ グループマネージャー 小笠原忍様

早速ですが、よろしくお願いいたします。

大規模・高純度プラスチックリサイクル事業の概要についてお聞かせください。

混合・破砕された家電由来のプラスチックを、PP(ポリプロピレン)とPS(ポリスチレン)、ABS(※)に選別します。PPとPS、ABSの3つが、家電製品のプラスチックとして用いられる素材の7割から8割ほどを占めているのですが、それらを単品で取り出して、もう一度製品の材料に利用するという事業を3年ほど前からスタートしました。

※アクリロニトリル(Acrylonitrile)とブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)を合わせたプラスチックのこと。

三菱電機のグループ会社である「株式会社ハイパーサイクルシステムズ」は家電リサイクルプラント(工場)であり、大規模・高純度プラスチックリサイクル事業の前段階の処理を担っています。

家電リサイクルの仕組みは、お客様が使用済みとなったテレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンの4つの家電を排出し、販売店が回収して製造業者に戻すという流れになっています。そして、製造業者は自分たちが委託するリサイクルプラントで製品を処理し、材料を再商品化していく義務を負っています。

主要家電メーカーによるリサイクルのグループは、大きく中核会社2社(※パナソニック・東芝)のAと5社(※三菱電機・日立アプライアンス・ソニー・シャープ・富士通ゼネラル)のBとに分かれています。当社は、Bグループの中核会社5社のひとつに含まれています。

ハイパーサークルシステムズはBグループのリサイクルプラントであり、東京都や千葉県で回収された家電を処理しています。ハイパーサイクルシステムズでは、不用品の中にある有用な資源を、高度な技術を用いて取り出し、純度の高い原料として生まれ変わらせています。

最初に、手解体によって有害なものや法律で回収が義務付けられているもの、あるいは単品としても材料に活用できるものを分けていきます。そして、残ったものを破砕機に入れます。

破砕選別ラインは、大きく冷蔵庫とそれ以外の家電に分かれています。冷蔵庫は断熱材の中にフロンを含んでいるものがあるため、専用の破砕機で砕いて、「断熱材フロン回収装置」でフロンを回収しています。破砕機で破砕されたものから磁力選別装置や分級装置、非鉄選別装置によって鉄・銅・アルミなどを回収していきます。

ラインには「プラスチック残さリサイクル設備」というものもあります。金属類を破砕選別した後にシュレッダーダストが残るわけですが、家電の場合には自動車などとは異なり、ほとんどがプラスチックです。そのプラスチック残さ専用の破砕選別プロセス(微破砕プロセス)を設けています。

選別前のプラスチック残さというのは、3cmから10cmくらいの大きさにまで砕かれるのですが、金属を回収してはいるものの、銅線などの細かい金属といった異物がまだ混じっています。そこで、さらに8mmほどにまで破砕して、ふるいで粒度を分ける「分級装置」や、比重の違いにより金属や再利用できないプラスチックを取り除く「乾式比重選別装置」、高電圧の放電装置によってさらに細かい金属を取り除く「静電選別装置」を通じて、純度の高いプラスチックに分けていきます。

選別前のプラスチック残さ

選別後のプラスチックは大(※8mmほどの大きさのもの)と小(※それよりも小さいもの)に分けられるのですが、大のものが8割から9割くらいを占めています。ハイパーサイクルシステムズから供給される、この微破砕プラスチックを原料として家電製品に再利用できるまでに選別、加工することを、同じく三菱電機のグループ会社である「株式会社グリーンサイクルシステムズ」が担っています。

微破砕プラスチック

グリーンサイクルシステムズのリサイクル事業は、どのような流れで行われているのですか。

家電などから回収した微破砕プラスチックから、まずは湿式比重選別装置によってPPを回収します。次に、ABSとPSの混合物を同じように比重で選別します。さらに、ABSとPSの比重はほぼ同じなので、静電選別装置によって分けていきます。

選別装置の全景

2003年に「RoHS(ローズ)指令」と呼ばれる欧州の有害物質使用制限が登場し、日本国内でも2005年に「J-Moss(※)」と呼ばれる特定6物質の電気・電子機器の使用規格がつくられました。以前の家電製品には、その対象物質である特定難燃剤が含まれたプラスチックが一部使われていたため、家電としてリサイクルするには除去しなければなりません。

※ジェイモスと読む。正式名称は「電気・電子機器の特定の化学物質の含有表示方法(the marking for presence of the specific chemical substances for electrical and electronic equipment)」であり、特定の化学物質の情報開示方法を示したJIS規格(JIS C 0950)を指す。「日本版RoHS指令」とも呼ばれており、対象となる化学物質はRoHS指令と同じである。

そのため、グリーンサイクルシステムズのリサイクル事業においても、臭素含有物質の除去を行う必要があります。具体的には、透過X線を使った装置によって、PP・PS・ABSのそれぞれにおいて臭素を含有するものを取り除き、最後にリペレット(再生樹脂)化して、製品に用いるという流れとなります。

以上のように、家電リサイクルプラントから出てきた破砕混合プラスチックを、グリーンサイクルシステムズの「混合プラスチックリサイクル技術」により、「比重選別」「静電選別」「X線分析選別(臭素含有物質除去)」を通じて純粋なプラスチックに選別し、リペレット工程を経て製品に再利用することになります。

グリーンサイクルシステムズでは、2010年に大規模・高純度プラスチックリサイクル事業を開始しました。初年度の混合プラスチックの年間処理量は5,000tほどだったのですが、2011年には8,000tを超えました。2012年には9,000tを超えており、今年(2013年)は当初の目標であった10,000トンを達成できるのではないかと思っています。

大規模・高純度プラスチックリサイクル事業の開始については、2008年時点ですでにプレスリリースを行っているのですが、その際に掲げていた10,000tという目標に、ようやく到達することができるわけです。


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