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いきものがつながる緑地づくりのために! DNPが実現する自然共生社会とは

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敷地内に「いきものがつながる緑地」を作り、自然共生社会へ :: 大日本印刷のCSR・環境活動

環境活動の一環として、拠点周辺のいきものを考慮した緑地作りにも積極的に取り組まれていますね。

鈴木氏:「環境との共生を維持していくことが、企業としての持続的成長に不可欠である」という方針のもとに、本社のある東京・市谷地区での緑地作りや工場敷地内の樹林の整備などに取組んでいます。
この方針を実現するために何ができるのか考えた時に、各地の工場にある緑地を生かすことで周りの環境が改善可能だと思い至ったのです。緑地に芝や園芸種の植物を植えるだけでなく、環境や生物にとってプラスになるように使えないかと。

素晴らしい発想ですね。どのようにその構想は活かされているのでしょうか?

鈴木氏:中部地方にある工場敷地内の話をしましょう。自然共生社会を目指すに当たって、まず全国で緑地が使えそうな工場をピックアップしたのですが、その1つが中部でした。調査で現地に行った時に、工場の裏の土手でジャコウアゲハ(図3参照)の群れに出くわしたのです。ジャコウアゲハは2012年3月以降、絶滅危惧種IB類に指定されている希少な蝶です。そのジャコウアゲハが好きな植物が土手に自生していたので、その植物を敷地内に植えて手入れしやすくすれば蝶の保護につながるのではないかと考えました。そこから徐々に、各地での環境整備に乗り出しました。

ジャコウアゲハ
図3:工場裏の土手のジャコウアゲハ

森氏:このような活動のグループ内認知が広がることで、他の工場からも「敷地内に珍しい植物が生えているけど、どうしたらいい?」というような問い合わせが増えましたね。

良いサイクルができあがっているのですね。会社全体に活動を浸透させていくことも大事ですね。

鈴木氏:直接売上・利益につながることではないので、各拠点への展開については試行錯誤しながら進めてきました。当時は敷地内の緑地を活用した事例も少なかったからこそ、やれることは何でもやっていこうという前向きな精神で進めて、社内報などで活動の紹介も行いました。各工場の担当者も、社内報に活動報告が載ると「自分が管理しているんだ」と誇らしげに広めてくれて、“自分ごと”である認識が高まるのです。それと同時に、周囲の理解も少しずつ得られるようになっていきました。活動をスタートした頃から現在まで、私達自身もできる限り時間を割いて現地に行くように心掛けています。1、2回でも一緒に緑地の調査をすると、新たな発見を楽しんでくれる社員が多くなっていきますね。

地域の方々と連携した取組みについてはいかがでしょうか?

鈴木氏:中部地方のグループ会社、DNP中部では、庄内川の河川環境改善のため、2011年から「庄内川ヨシ刈り活動」に参加しています。これは、国土交通省支援のもと、沿岸に暮らす市民と企業とが協働して行っている活動です。加えて2013年には、刈り取ったヨシで抄造したヨシ紙で、活動に参加する小学校の卒業証書の制作を始めました。協働団体からは印刷会社らしいユニークな取組みとして評価されています。さらに小学校を訪問して「ヨシが持つ水質浄化作用」のワークショップも行い、環境保全に関わる教育コミュニケーション活動を地域社会とともに深めています。

グループ各社が、テーマとしている周囲の方とのコミュニケーションや“自分ごと化”をうまく進めていらっしゃいますね。市谷地区の緑地についても教えてください。

鈴木氏:「市谷の杜」と名付けている市谷地区の緑地計画は、地区全体の再開発がきっかけで始まりました。新たに建てたビルに本社機能や営業・企画などの機能を集約していく際に、敷地内に公開空地を作る必要がありました。せっかくなら環境にプラスになるものにしようと「市谷の杜」の計画がスタートしたのです。

市谷地区を中心とした半径2km圏内には、新宿御苑や靖国神社、皇居など、意外と緑がたくさんあるのですが、地区の中心にだけほとんど何もない状態でした。ここに、ある程度の規模の緑地ができたら、いきものが行き来できる環境になるのではないかという考えもあり、本格的に計画を進めていきました。かつてこの辺りに存在していた武蔵野の雑木林を再現することをコンセプトにしています(図4参照)。

市谷の杜
図4:「市谷の杜」

実は今日(取材当日)の午前中、「市谷の杜」にいる鳥と昆虫の調査をしました。専門家の方々と一緒に1エリアにつき1時間程かけて散策しながら、鳥や昆虫を見つけたら写真を撮って(図5参照)。朝6時半から始めて、5時間くらい(笑)。計画が始まって1年ほどなので、まだ大きな変化は見られなかったのですが、木々が成長して背が高くなれば、靖国神社の高木に生息するモズや上空を飛ぶハヤブサが降り立つかもしれません。楽しみです。

左:カワラヒワ、右:ナミアゲハ
図5:「市谷の杜」調査結果の一部(左:カワラヒワ、右:ナミアゲハ)

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