株式会社東芝

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2050年のあるべき姿を実現するために

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株式会社東芝

毎年2月初旬に「東芝グループ環境展」を開催されていますね。

例年1月から2月ごろに、本社ビル39階の多目的ホールで「東芝グループ環境展」を開催しており、今年(2012年)で21回目となります。これは当社の環境への取り組みを多くの方々に知っていただく目的で開催しています。

「環境ビジョン2050」のところでお話ししましたが「Green of Process」「Green of Product」「Green by Technology」と、これらを支える「Green Management」に分けて、具体的な事例をパネルや製品などにより紹介しています。

環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。

今年の「東芝グループ環境展」でもテーマのひとつに掲げさせていただいたのですが、生物多様性の保全が重要だと考えています。

当社では“事業所を基点とした地域連携による生態系ネットワークの構築”という視点で取り組みを進めており、住宅地やオフィス街、工場の敷地内でも生態系の維持・拡大は可能だということを考えています。

例えば、当社の事業所や工場の敷地内では、緑化活動やビオトープ(生物の生息空間)の造成などを行っており、野鳥やトンボ、チョウなどが飛来するような環境づくりを目指しています。当然ですが、これは事業所や工場の敷地内だけで完結するものではなく、周辺地域も含めた保全が必要です。それを実現するためには、地域住民の方々やNPOなどとの協力・連携により進めていかなければなりません。このような取り組みを、2009年9月に策定した「生物多様性ガイドライン」に基づいて行っています。

また、事業所の周辺地域に生息する水生生物の人工的な保護にも力を入れています。具体的には、メダカやホトケドジョウなど環境省や各地域で絶滅危惧種に指定されている魚類を、事業所やオフィスで飼育しています。保護を行う際には、生物多様性条約第9条に記載されている「生息域外保全(※)」の一環であることを重視しており、原則として事業所の周辺地域に生息している個体を保護しています。繁殖した場合には、従業員の家庭に分けたり、近隣の小学校と共同飼育を行ったりするなど、生息域外保全の拠点拡大を図るとともにステークホルダーとの環境コミュニケーションにも活用していきます。

さらに、従業員に対する生物多様性保全意識の啓発に加え、就業中の気分転換による生産性の向上やメンタルヘルスの改善など、付加的な効果も期待できます。

※本来の生息地では存続できない生き物を、自然の生息地の外において人工増殖を図り、本来の生息地を再生した上で野生回復を図る方法。本来の生息地のなかでの保全を図る「生息域内保全」を優先するが、その補完的措置として取られる手段。

事業所や工場の敷地内には、珍しい野鳥などが飛来することもあるのですか。

当社の横浜事業所(横浜市磯子区)では、処理された排水を太陽エネルギーと動植物の働きを利用して自然水に近い状態まで浄化する研究のため、1977年に実験池がつくられました。その後、工場エリアで排水を貯留する目的で大きくなり「ラグーン(※)」として整備されたのです。

※一般に湾や入り江、干潟などを意味するが、横浜事業所では敷地内のビオトープをこのように呼ぶ。

しかし、その後の事業構造の変化により事業所の排水量が減り、ラグーンに排水が滞留する時間が長くなりました。そのため、藻類の繁殖により水が濁るという問題が発生したのです。そこで、2005年度と2007年度に水の流れやすい構造にする大規模な改修工事を実施し、それに併せてラグーン周辺に多くの樹木を植え、多様な生物が生息できる空間となる改造を行いました。

改修工事により生まれ変わったラグーンには、希少種であるカワセミが飛来し、カルガモが繁殖しています。また、野生のタヌキがたまに姿を現わしたり、全長2メートルもあるアオダイショウの抜け殻が見つかったりすることもあります。一般の方に公開する場合もあるのですが、さまざまな動植物を発見できるのはもちろん、広大な森が整備されていること自体に驚かれる方も多いようです。

“カワセミ

最近では、横浜事業所のラグーンで見られるさまざまな動植物の写真や映像を、Facebookの東芝公式ページで定期的に公開しています。

東京の府中事業所(府中市)では、敷地内に絶滅危惧種のカントウタンポポが自生しています。タンポポが絶滅危惧種だというと驚かれる方も多いようですが、よく見られるものはセイヨウタンポポという種類であり、そちらは環境省が指定する要注意外来生物です。セイヨウタンポポは生命力や繁殖力が非常に強く、カントウタンポポが駆逐されている状況です。当該事業所の敷地は広いこともあり、セイヨウタンポポの影響をあまり受けることなくカントウタンポポが自生することができたようです。

“カントウタンポポ

また、広大な敷地を持たない事業所でも、ちょっとした鉢植えを置くことでビオトープを形成するのかという実証実験を行っています。

これだけは話しておきたいということはありますか。

当社のようなメーカーでは、CO2の排出量をはじめとする環境負荷をいかに抑えるかが大きな課題です。製造だけではなく、事業拡大(※工場が増えるなど)などによってもCO2の総排出量は増加することになります。事業拡大と環境負荷の抑制……、難しい課題ではありますが、努力して排出量を抑えていかなければなりません。

また、海外展開する場合、環境規制が日本とは異なる国もあり、その点を考慮しなければなりません。そもそも、日本では規制されている物質が海外では規制対象外である、あるいはその逆というケースもあります。このような環境規制の違いをどのようにするかということも今後の課題だといえるでしょう。

藤枝様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。ファクターやエクセレントECPなど独自の基準・指標を設定しており、外部からの評価が高いのも納得です。


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