東レ株式会社

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2020年近傍で達成すべき2つのビジョン

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東レ株式会社

前述の「CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)」についてお聞かせください。

炭素繊維とは、要するに炭化した繊維のことです。炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維あるいはピッチ繊維といった繊維を蒸し焼きにし、炭素以外の元素を取り除いて作ります。東レが製造するのはPAN系炭素繊維「トレカ®」です。この炭素繊維に樹脂を含浸させた後、硬化させて成型した複合材料が「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics/炭素繊維強化プラスチックス)」というものです。

なお、「CFRP」とよく比較されるものとして「GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics/ガラス繊維強化プラスチックス)」があります。これは、グラスファイバーとプラスチックを合わせた素材です。

東レの炭素繊維「トレカ®」」

基本構造に「CFRP」を採用した電気自動車を開発されたそうですね。

「TEEWAVE AR1(ティーウェーブ エーアールワン)」のことですね。この名前は、「Toray Eco Efficient Wave Advanced Roadster 1」を短縮したもので、“東レはEcologyとEfficientを両立させる新しい波を生み出す”というメッセージが込められています。「TEEWAVE AR1」
は当社の自動車におけるグリーンイノベーション戦略を体現するフラグシップモデルであり、環境配慮型の先端材料や先端技術を駆使した、次世代型コンセプト電気自動車(EV)です。なお、ブルーのボディは当社のコーポレートカラーも表しています。

TEEWAVE AR1(ティーウェーブ エーアールワン)

車体の基本構造にはRTM(※1)一体成形によるCFRP製モノコックを採用し、ボンネットやボディ外板にもCFRPや樹脂材料を多用しました。これにより軽量化(※2)はもちろん、優れた車体剛性や衝突安全性、さらに環境にやさしくライフサイクルでのCO2低減も実現しています。

※1:CFRPの成形方法のひとつで「Resin Transfer Molding(樹脂注入型)」の略。ここでいうものは、正確には「ハイサイクルRTM成形技術」を意味する。従来のRTM法を大幅に改良し、樹脂の特性や注入方法を工夫することで、成形サイクルの時間を10分ほどに短縮化した。

※2:鋼板を使う従来のEVと比較して、4シーター乗用車に換算して車体重量が1,520kgから975kgへと3分の2ほどに軽量化を実現。

車体の軽量化により、“電費”も向上しているのですか。

同じ電池を用いた場合、当然ですが軽量化によって従来のEVよりも航続距離が長くなっています。もちろん、CO2排出量も4シーター乗用車に換算して従来EVの14.9トンから13.6トンと、約9%も低減することが可能です。0-100kmの加速は11.0秒、最高速度は147km/h、1回6時間の充電で最大185kmを走行することができます。

「TEEWAVE AR1」は特定の自動車メーカーとの共同ではなく、“当社独自”で開発しました。あくまでもコンセプトカーであり、当社は自動車メーカーになろうとしているわけではありません。東レの持つCFRPや樹脂、フィルム、繊維などの先端材料・技術を使うことによって、軽くて丈夫かつ環境にもやさしい自動車の製作が可能ということを広く知ってもらい、実際の走行を見てもらうことで自動車メーカーや部品メーカーに材料や技術を採用していただければと思います。そのため、今回製作したのは1台のみです。

かっこいいデザインだと思いますが、1台だけの製作とはもったいないですね。どれくらいの開発費がかかっているのですか。

公表している情報ですが、開発に3億円ほどかかっています。先述したようにあくまでもコンセプトカーであり市販の予定はないのですが、実際に公道を走ることができるように、ナンバー取得の手続きも進めています。

2シーターオープンモデルの「TEEWAVE AR1」は、マクラーレンF1のデザインを担当したことで知られる、ゴードン・マレー(Gordon Murray)氏によってデザインされました。現在(※2011年現在)、彼は英国で環境対応タウンカーの企画・設計を手がける「Gordon Murray Design Ltd.(ゴードンマレーデザイン社)」という企業の代表です。

今年(2011年)の9月14日と15日に東京国際フォーラムで開催した「東レ先端材料展2011」で、「TEEWAVE AR1」を初めて披露しました。できるだけ多くの方に見ていただける機会を提供したいですね。


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