ソニー株式会社

メーカー

製品作りにおける環境負荷を認識しよう

50_sony_grph_02

当社には「ソニーグループ環境ビジョン」というものがあるのですが、地球温暖化・地球資源・化学物質・自然環境の4つについて、どのようなことを行うかといった方針・基本姿勢を打ち立てております。そして、「ソニーグループ環境ビジョン」の方針に基づいて、「Green Management 2010(GM2010)」という行動計画を定めています。その内容は主にエネルギー・資源・化学物質に関する内容であり、エネルギーであれば絶対値で消費電力量の削減、循環材利用率の向上、化学物質・有害物質の使用禁止というような具体的な目標を「GM2010」で定めているのです。技術を活用し、少ない環境負荷で大きな付加価値をお客様に持ってもらうビジネスの創出を目指しています。

当社の環境への取り組みは、大きく4つの領域から成り立っていると考えています。

1つ目は工場・オフィス・事業所(当社ではサイトと呼んでいます)における環境負荷。要するに、私たちが実際に行っている事業活動から発生する環境負荷です。

2つ目は製品における環境負荷。お客様が製品を使うことによって発生する環境負荷です。

3つ目は研究開発における環境負荷。現在ではなく、将来の環境負荷を低減するための技術開発です。

4つ目が、コミュニケーション。私たちの行っている活動を正確にお客様やステークホルダーの方々、そして社員に伝えていくためのコミュニケーションということです。

工場・オフィスではエネルギーの削減、省エネを最大限に実践します。ただし、それでも削減できないところについては、再生可能エネルギーの購入によりCO2の排出ゼロを目指します。また、国内の工場で培った環境負荷低減の技術やノウハウについては、海外の工場でも展開をしています。

主要エネルギーの削減に関する話題として、熊本県の半導体工場「ソニーセミコンダクタ九州(株)熊本テクノロジーセンター(熊本TEC)」があります。その工場では、熱源システムのトータルでの効率化がなされています。実は、それぞれの機械をフル回転で動かすと、逆に効率が悪くなるのです。また、なかにはフル回転させる必要のない機械もあったりします。熊本TEC内では、ある機械は80%が最適、別の機械は70%というように、トータルで一番効率的なのはどれかということについて、中央でコントロールをする仕組みを採用しているのです。熊本TECの省エネ技術については、日経新聞でも5月に大きく広告を出して、パイプの曲げ方ひとつにおいても省エネに配慮した設計がなされていることをお知らせしました。通常の冷熱源システムと比較した場合でも、CO2の排出量を83%も削減することができました。なお、熊本TECの省エネ技術を中国の工場でも展開し、その技術に関する人材育成を行ったりもしています。

熊本TEC

日経新聞に広告を出したのは、社外の方たちに広く知ってもらうことはもちろんですが、本当の目的は社員の人たちに分かってもらうところにもありました。要するに、社員教育の一貫でもあったわけです。まずは広告で知ってもらって、次に社内報を読んでもらい、あのときの広告はこのことだったのかといった形で理解してもらう目的があったのです。

今年(2008年)の2月から、月に何回か新聞広告を出させていただいて、当社の環境に対する姿勢について掲載していただきました。

当社では、再生可能エネルギーについても積極的に取り組んでおります。グリーン電力証書(※)の仕組みの構築については、当社も一部ですが協力いたしました。実際に再生可能エネルギーを必要としているところと、再生可能エネルギーを作るのが可能なところというのは、場所的な隔たりがあります。その隔たりを埋めるために、証書というものを作ったわけです。グリーン電力証書により、発電所から遠く離れた場所であっても、再生可能エネルギーによる電力を使用したとみなされるわけです。当社では、海外の事業所も含めて2010年までに、CO2換算で5万トン以上の再生可能エネルギーを導入するという目標を立てています。

※グリーン電力証書システム=風力やバイオマス(生物資源)といった自然エネルギー(再生可能エネルギー)によって作られた電力の付加価値部分を、証書化して取引することを可能とした仕組みをいう。証書を保有する企業は、その証書により、使用する電力を自然エネルギーで作られたものとみなすことができる。

ソニーは、能代(秋田県)の木質バイオマス発電のスキーム構築にも協力をしています。森を最適に保つためには間伐をしなくてはならないのですが、ソニーは間伐によって生じた木の運搬費用を支援しながら、その間伐材を含む木材によって作られた再生可能エネルギーについて、グリーン電力証書を通じた購入を行っています。

海外では、「ソニーDADC(Sony Digital Audio Disc Corporation)オーストリア」というザルツブルグに程近いアニフという町にある工場が、グリーン電力100%で稼動しています。具体的には、地元の電力会社が供給するエコミックスという、CO2排出がないことが証明されている電力商品を購入しています。その商品を購入する際に支払った金額が、既存の水力発電所の環境配慮向上や、バイオマスなど水力以外の再生可能エネルギーの開発に使用されています。オーストリアでは古くから水力発電が盛んであり、数多くの水力発電所が作られています。こういったダムの横にフィッシュパス(魚道)という魚のためのバイパスを建設する事もその一例です。

オフィスビルについても省エネに配慮した設計、再エネルギーの利用を行っています。日経新聞の広告でもお知らせしたのですが、昨年(2007年)の2月にできた芝浦の新しい本社ビルでは、通常のオフィスビルに比べてCO2の発生量が48%も低くなっています。その理由のひとつは、そのビルの隣に「東京都下水道局 芝浦水再生センター」というものがあるのですが、そこの下水処理水を空調に利用しているのです。ビル屋上の冷却塔から排出される熱などがヒートアイランド現象の原因として問題になっていますが、水再生センターの下水処理水を利用して、冷却塔の代用としているのです。

またダブルスキンという二重ガラスの外壁構造により、ガラスの間に太陽光による暖かい空気を発生させ、オフィスビル内に魔法瓶のような効果をもたらしています。そのため、冬でもほとんど暖房を利用することがありません。

ソニーの半導体工場である熊本TECでは、地下水の涵養を実施しています。半導体工場では大量の水を使うため、地下水の汲み上げを行う必要があるわけです。その地下水は地域住民の生活用水としても利用されています。それを補うため、川から引いた水を近隣の水田に張り、浸透させて地下に水を還元するような取り組みを行っているのです。

ソニーの製品についてですが、エネルギー消費、温室効果ガス排出という観点からいいますと、当社では白物家電を作ってはいませんので、テレビが中心となります。テレビ製品についての省エネにも熱心に取り組んでおります。実はテレビ製品はブラウン管の時代から比べると、かなり省エネが進んでいるのです。省エネ・省資源についても新聞広告を出し、お客様に伝えております。新しく発売となった<ブラビア>JE1という製品があるのですが、この製品は消費電力が89Wという省エネNO.1(2008年6月17日現在)の液晶テレビです。

化学物質管理という面では、2001年にオランダ当局にPS oneという製品の周辺機器にカドミウムが混入していたため、出荷停止命令を受けたということがありました。それ以降、当社では製品の化学物質管理というものに注力するようになったのです。ひとつの製品を分解してみると何千もの細かい部品で構成されているわけですが、そのひとつひとつに環境に影響のある化学物質が入っていないということを確認しなければなりません。そこで、「グリーンパートナー環境品質認定制度」という管理の仕組みを構築しました。

部品にそういった化学物質が入っていないことを確認するためには、まず取引先の皆様のご協力が必要になります。そのため取引先を監査させていただき、環境に影響のある化学物質が入らないような仕組みを取引先に導入いただいております。


関連記事一覧

タグ