日産自動車株式会社

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環境問題への終わりなき挑戦-「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」

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日産自動車株式会社

電気自動車の開発に至った要因として、どのようなことが挙げられますか。

社会的にも環境問題やエネルギー問題が非常にシリアスになってきたことに加えて、技術が大幅に進歩したこと、お客さまの意識が変わってきたことが、電気自動車のニーズが高まってきた要因だと言えるでしょう。この3つのどれが欠けたとしても、現在のような電気自動車の時代を迎えることはなかったはずです。

当社がゼロ・エミッション車に取り組む大きな外的な要因は、CO2排出量を削減することにあります。その一方で、内的な要因というのもあります。

内的な要因とは、どのようなものですか。

それは、当社が電気自動車に必要なキーとなる技術を持っていることです。

例えば、リチウムイオンバッテリーは1991年にソニー株式会社さんが開発しましたが、その翌年から当社は社運をかけて、将来的にEVに搭載するためにバッテリーの研究・開発を進めてきました。バッテリー技術における大きな革新に加えて、社会の状況やお客さまの意識の変化もあり、EVの実現に至ったというわけです。その意味で、当社はあきらめることなく20年間ずっと継続してきたという点が、電気自動車を実現できた内的な要因だと言えるでしょう。

電気自動車を2016年までに累計で150万台販売するという目標を掲げているとのことですが、その進捗はどれくらいなのですか。

2013年4月の時点で、グローバルで6万2千台以上を販売しています。そのうちの50%弱は日本での販売が占めており、アメリカがそれに続くという状況です。おかげさまで当社の100%電気自動車「日産リーフ」は、販売台数世界ナンバーワンの電気自動車となっています。

「日産リーフ」は、国内外で数多くの賞を獲得していますね。

大変嬉しいことに、当社は「日産リーフ」でさまざまな賞をいただきました。そのひとつが、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2011」の受賞です。ほかにも、「欧州カー・オブ・ザ・イヤー2011」、日本では「2012年次RJCカー・オブ・ザ・イヤー」と「2011-2012日本カー・オブ・ザ・イヤー」をダブル受賞しています。

日産リーフ

実際に「日産リーフ」を利用している方々の反応はどうですか。

ご利用いただいているお客さまの声をまとめると、「ゼロ・エミッションで社会に貢献している」「以前乗っていたガソリン車と比べると、ランニングコストが安い」「ガソリンスタンドに立ち寄る必要がない」「加速がスムーズであり、音が静かといった性能面で優れている」「運転していてどれくらい電力を使っているか、ブレーキの際にどの程度電気をためるかがパネルで分かるので、エコドライブを意識するきっかけとなる」「スマートフォンをリモコンエンジンスターターとして利用できるのが便利」など、高い評価をいただいております。

特に寒い日は、スマートフォンや携帯電話をエアコンのリモコンとして使って、運転する前に車内を温めるということなども可能です(※EV-ITリモート操作)。

当社は「日産リーフ」のオーナーズイベントを定期的に実施しているのですが、皆さん電気自動車に乗って環境負荷低減に貢献しているという点に誇りを持っていますね。同イベントに参加していただいたオーナーの皆さまには、「日産リーフ」の特別な名刺を作って差し上げています。以前に日本郵便株式会社さんとの打ち合わせがあったとき、担当の方がその「日産リーフ」のオーナーの名刺を出されて、「私も乗っていますよ」と紹介されたことがありました(笑)。

「日産リーフ」の性能面について、詳しく教えてください。

電気モーターは、最大のトルクまで一気に出力できるようになっており、その状態を継続することが可能です。そのため、「日産リーフ」はとても滑らかでありながら力強い加速を実現しています。

また、静かさという点でも優れた性能を発揮します。高速道路や舗装されていない道路の走行中に車内がどれだけ静かなのかというデータを取ってみると、「日産リーフ」は、高級車の上位クラスの静音性を有することが分かりました。

電気自動車に使用している電池はコンパクトなものですが、ある程度重さがあり、車内の床下の中心に搭載(ミッドシップ)しているため、結果的に重心が低くなり、安定したハンドリングを実現しているのも大きな特徴です。「日産リーフ」は走行中のゼロ・エミッションを実現するという点が前面に出される傾向がありますが、クルマとしても優れた性能を有していることを、もっと広く知ってもらいたいですね。

「日産リーフ」のランニングコストは、ガソリン車と比較すると年間でどれくらいの差があるのですか。

同じ走行距離で比較した場合、年間で7分の1から10分の1くらいの差があります。

当社では、従来のガソリン車にはなかった「日産リーフ」の価値を「3つの革新」と呼んでいます。1つ目は「走行中のゼロ・エミッション」、2つ目は「高性能の電池」、3つ目が「専用のITデバイス」という革新です。

「3つの革新」とは、具体的にはどのようなものなのですか。

まず、「ゼロ・エミッション」ということは、極端な話、家の中に「日産リーフ」を入れることだって可能です。例えば、真冬に年配の方が病院に行かなければならないとします。しかし、クルマに乗るために外に出て寒い思いをするのは嫌ですよね。その点、「日産リーフ」であれば排出ガスが出ないことに加えて、揮発性の高いガソリンを燃料として使用していないので、家の中に入れることで寒い外に出ないまま病院まで行くこともできるわけです。

エネルギーの革新により、電気はさまざまなソースからつくることができるというメリットもありますが、近年注目されている再生可能エネルギーは、天候などの影響による出力(供給)を安定させるために、蓄電する装置が必要となります。この点に関わるのが、2つ目の「高性能の電池」です。

当社では、阪神淡路大震災と東日本大震災とでライフラインの復旧の早さについて比較したデータを持っています。驚くことに電気は、2日から3日で約8割ほどが回復します。それに対して水道やガスは非常に遅く、東日本大震災では、水道が8割ほど復旧したのは20日くらい経過してからでした。ガスに至っては、20日経ってもせいぜい復旧したのは4割程度だったのです。

電気の復旧がほかのライフラインよりも早いということは、「日産リーフ」が活躍できる場があるということですね。

東日本大震災の発生後、ガソリンが不足したため、ガソリンスタンドに行列ができたことは記憶に新しいかと思います。これにより、一般の方はもちろん、お医者さんや役所の職員の方などが移動できないという深刻な問題が発生しました。しかし、多くの地域で電気は早い時期に復旧していたため、当社では66台の「日産リーフ」を被災地に送り、活用していただきました。

もちろん、燃料電池や太陽光発電を活用するという選択肢もあったのですが、前者は停電すると発電することができなくなる、後者も家全体をまかなう電力を確保することが難しいという点で問題がありました。

当時、すでに当社ではスマートグリッドのような技術を開発していたのですが、大震災の後に大特急で取り組まなければならないということで開発したのが、“LEAF to Home”です。“LEAF to Home”については後で紹介します。

「3つの革新」の、最後の「専用のITデバイス」とはどのようなものなのですか。

「専用のITデバイス」とは、24時間・365日、外部のシステムとデータのやり取りが可能ということを意味します。前述の、スマートフォンをエンジンスターターやエアコンのリモコンとして利用できるのも、これにかかわる話です。また、充電スポットが新しく設置された場合には、データを更新して自動的にナビゲーション上に表示します。

「日産リーフ」と当社のデータセンターがつながっているため、クラウド上でほかのシステムに接続すれば、オンデマンドのカーシェアリングやEVタクシーなど、さまざまな可能性が広がります。

電気自動車については、当社だけでこの全く新しい技術を導入するのは難しく、多くの方々のご協力を得ながら取り組みを進めてきました。例えば、100以上もの国や企業との間で、電気自動車を普及するためのパートナーシップを締結しています。当初は電気自動車本体と蓄電池を日本で生産をしていたのですが、現在では米国や英国といったグローバル規模で生産を行っています。

LCA(Life Cycle Assessment/ライフサイクルアセスメント)の観点からも、電気自動車には優位性があります。クルマの製造に必要な素材の採掘から廃車となるまでのライフサイクルにおいて、「日産リーフ」と同等のガソリン車と比較した場合、CO2排出量を40%ほど削減できると評価しています。

もちろん何から電気を作るかによって、削減の程度は変わってきますが、電気自動車には燃料製造時にもCO2排出量をゼロにできる可能性があります。

もう一点、走行時にPM2.5やNOxなどの有害な排出ガスを全く出さないことも優位な点です。大気汚染が課題となっている市街地を電気自動車で走行すれば、大気汚染を悪化させることがないため、ガソリン車よりも環境への負荷が少ないと言えるでしょう。

このように「日産リーフ」の価値は、CO2排出量ゼロと都心部の環境改善という2点に集約されるかと思います。

廃車となった場合、搭載している蓄電池はどうなるのですか。

当社の電気自動車用のリチウムイオンバッテリーは、クルマ用としての役割を終えた後もクルマ以外に利用できる充分な容量が残っており、また、蓄電池自体は丈夫なのでまだ使うことができるケースが多いのです。そこで、住友商事株式会社さんと当社とで設立した合弁会社「フォーアールエナジー株式会社」による、蓄電池の二次利用の取り組みも進めています。

「日産リーフ」の車載用蓄電池

例えば、当社の横浜本社に設置したソーラーパネルで発電し、高いリユース性能を保持する車載用バッテリーに蓄電して、その電気を使って本社前に設置した急速充電器を介して充電を行っています。「日産リーフ」で換算すると、年間1,800台分の充電が可能です。


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