ライオン株式会社

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河川の発泡問題と植物原料の界面活性剤「MES」

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ライオン株式会社

「商品を通じた環境配慮」のところで少し触れていた、「ライオン エコ基準」についてお聞かせください。

「ライオン エコ基準」は2006年に策定されました。その当時、エコ基準としては家電などでどれだけ消費電力が少ないか、車ではどれだけ低燃費かというものはあったのですが、日用品ではそのような基準はありませんでした。

そのため、「商品を通じた環境配慮」という柱もあって、ライオンでは具体的なエコ基準を策定し、それをクリアした商品の製造を推進していこうとなりました。

2006年以前から、植物原料の使用や包装材料の削減といった取り組みが行われていたのですが、それらを統一したライオン独自のスタンダードを作ろうということで、経営会議にかけて認めていただきました。

「ライオン エコ基準」は、ライフサイクルアセスメント(LCA/Life Cycle Assessment)の視点に基づいているというのが大きな特徴です。原料調達から廃棄までの全体で、どれかひとつでもとても環境に優れた点のある商品作りをしようというのが、「ライオン エコ基準」の基本的な考え方になります。

「ライオン エコ基準」では、原料調達・材料調達・製造・物流・使用・廃棄まで、それぞれのステージで環境負荷を定量的に評価し、各項目の評価基準をひとつ以上クリアしたものを「エコ商品」と規定しています。

「原料調達」というステージでは、評価項目として植物原料の使用があり、評価基準として組成有機物中の植物原料の比率が50%以上であることが挙げられています。この比率についても、単に植物から作っていれば植物原料だというのではなく、全部の炭素を元素にまで分解して考え、炭素を個別に植物由来か石油由来かを判断して、植物由来であれば植物原料の比率が50%以上でなければならないという形でカウントします。

ひとつの化合物のなかに植物ではないものが混じっていたとしても、全体で植物由来とする考え方もありますが、当社では細かくカウントしているわけです。

「MES」は植物原料の界面活性剤と述べましたが、100%植物由来というわけではありません。今後、グリーンケミストリーという考え方が発展したときには100%としたいのですが、現状(2011年6月現在)では一部に石油由来のものが含まれています。

「材料調達」のステージでは、リサイクル材料や植物由来材料の使用ということで、プラスチックなどの再生材や植物系樹脂・生分解系樹脂の利用を挙げています。

「製造」では、使用エネルギーや水、排水量など環境に負荷を与えるものについて20%削減することを掲げています。20%も削減するには、革新的な技術がなければ達成できないという意味で難しいといえるでしょう。原料調達から廃棄までの全体のうち、ひとつでもとても環境に優れた点のある商品作りをしようという考え方が、20%という数値に表れています。

「物流」のステージでは、従来品よりも20%以上コンパクト化または濃縮化されていることが評価基準となります。後述する「トップ NANOX(ナノックス)」という商品も、この部分における貢献が大きいといえるでしょう。

最後の「廃棄」のステージでは、容器包材量が市場主流品より15%以上削減できていることを評価基準としています。当社では市場で販売されている台所用洗剤や洗濯用洗剤などの全部を購入し、内容量当たりどの程度樹脂を使用しているといったデータを作りました。そこから平均値を割り出し、それよりも15%削減しようとするのはかなり大変なことなのです。当社の包装材料を開発しているチームからは、15%削減は難しいという声が上がっていますが、既存の技術の改良ではなく、先進的(革新的)な技術を生み出すことで達成可能だと納得してもらっています(笑)。

また、市場主流品というのは2年から3年経つと改良されるので、容器包材量が市場主流品より15%以上削減できていることという基準を、いずれ満たさなくなってしまいます。そのため、2年に一度データを作り直し、新たな平均値を算出するようにしています。

なお、有害化学物質を含まないことや生分解性が良好であることは“当然クリアすべきポイント”であるため、「ライオン エコ基準」の評価には入っていません。これらの点は、環境配慮を訴求できるポイント以前の問題であり、企業として当たり前のことなので、あえて含める必要はないという考え方に基づいています。

「ライオン エコ基準」を満たしている商品は、全体の何割ほどを占めているのですか。

商品全体の割合でいうと、2010年時点で6割強(63%)にもなります。売上比率で見た場合、8割(80%)を占めています。ただし、当社の医薬品については割合に含めていません。

歯磨き粉などは、効能・効果を謳(うた)っていても環境へ配慮する必要がありますが、「バファリン」などの医薬品は、植物原料かどうかは問題ではなく、安全で効果があるのかという点が大事だといえます。ただし、集計からは除外してはいますが、エコ基準は適用しています。なぜなら、包装容器の面では環境負荷を考慮する必要があるからです。

「ライオン エコ基準」を満たしている商品の割合は、今後増えていくのでしょうか。

「ライオン エコ基準」の運用が開始されてから、徐々にではありますが割合は高くなってきています。エコ基準の運用後の2007年は59%、2008年は60%、2009年は63%と全商品数に占めるエコ商品の割合は年々増えています。

もちろん、100%達成が理想ではありますが、「いつまでに必ず実現します」というのは難しいのが正直なところです。しかし、それよりも重要なのは、「ライオン エコ基準」を満たさない商品は市場に出さないという考え方を浸透させることだと思っています。

当社の製品開発会議において、必ず「ライオン エコ基準」は満たしているのかという点をチェックしています。さらに、開発の初期段階ですでにエコ基準を意識することを徹底していきたいと考えています。そうなれば、「ライオン エコ基準」を満たす商品の割合はさらに高くなるはずです。


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