ライオン株式会社

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河川の発泡問題と植物原料の界面活性剤「MES」

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ライオン株式会社

「ECO LION」活動とは、どのような取り組みなのですか。

「ECO LION」活動は、「温室効果ガス排出量削減」「資源の循環的・有効活用」「商品を通じた環境配慮」「化学物質の安全管理」「社内の環境意識醸成」という、5つの取り組みを柱としています。

最初の「温室効果ガス排出量削減」ですが、温室効果ガス(GHG/Greenhouse Gas)を事業でも、商品を通じても減らしていこうということです。

「資源の循環的・有効活用」とは、リサイクルに代表されることを、同じように事業でも、商品を通じても実施していこうという取り組みです。

なぜ“商品を通じても”という部分を強調しているのかといえば、3つ目の柱として「商品を通じた環境配慮」があるからです。歴史の部分も含め、ライオンではお客様に毎日お使いいただく商品を提供しており、製造部分でももちろん大事ですが、その思想が商品に生かされていなければならないと考えています。環境に配慮した商品であることに加え、それをお客様に分かっていただくこと、要は、ライオンの製品を使えば地球温暖化防止にも貢献している、循環型社会の形成に貢献しているとお客様に感じていただける商品を目指しています。この点に関連したものとして、あとで「ライオン エコ基準」についてもお話します。

4つ目は「化学物質の安全管理」です。界面活性剤の話が何度も登場していますが、当社は化学企業なのです。化学物質というのは、我々の生活を快適にするうえで不可欠なものですが、使い方や管理方法を間違えると、人の健康や自然の生態系に悪影響を与えてしまいます。よく「リスク・ベネフィットバランス」といわれたりしますが、どんなものでも“絶対に安全”や“絶対に危険”ということはないのです。いかに上手く化学物質の使用量を減らしつつ、使いこなしていくか、管理を徹底するかに努めていくことが必要です。

最後の「社内の環境意識醸成」は精神論的な部分も含まれていますが、ライオンという企業全体で積極的に環境への取り組みを進めているのに、従業員一人ひとりが関係ないという意識では、会社としての姿勢とはいえないわけです。会社の取り組みを社外に伝えることはもちろん、社内でも共有することで、従業員一人ひとりがこのような活動の実践者であるという意識を持ってもらわないと意味がありません。

2006年から「ECO LION」活動がスタートしたわけですが、中期経営計画とリンクさせた形で進めています。ライオンの事業展開における3つのキーワードとして、「健康」「快適」「環境」があるのですが、その重要なテーマのひとつに環境があるわけです。

1980年以降、植物原料へシフトしたのは、オイルショックの影響もあったのですか。

確かにありますね。しかし、当社が植物原料の研究をスタートしたのは1970年代の初めであり、オイルショック以前となります。ローマクラブの「成長の限界」の発表が1972年だったので、そのころにはすでに研究が始められていたわけです。

石油は原料や燃料として貴重な資源ということもあり、ライオンではそれとは異なる原料で洗浄力の高い界面活性剤を開発できないかと研究していました。

植物原料と配合した洗剤の発売が1991年なので、「ずいぶん長い間研究しましたね」といわれると少しつらいのですが、実は性能のよい界面活性剤の開発は早い段階でできており、それを使いこなす、あるいは大量生産するためにかなりの時間を要していたのです。微妙な反応バランスが必要となるため、洗剤の粉が黒くなってしまうこともありました。「洗剤の粉が黒くても、汚れが落ちれば問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実際にはそのような洗剤は売れないのです。洗浄力がどんなに優れたものであっても、白い衣類に黒い色が移ってしまうのではないかと心配される人が多いわけです。そのため、洗剤は“白くきれいな粉”であることが意外と重要になります。

微妙な反応バランスといいますか、界面活性剤とビルダーや酵素の最適な配合比率を見つけることが難しく、何度も研究を重ねて1991年にようやく植物原料の界面活性剤「MES」を配合した洗剤を発売することができました。そこからさらに、現在発売されている「トップ」など、10年以上かけて、当社の衣料用洗剤の成分の4分の3ほどを植物原料に切り替えました。

2006年に登場した「トップ」は、お客様にも好評を博していたのですが、従来の製品と比較してCO2の排出量を47%も削減することを実現しました。さらに、その後も改良を重ね、2009年に発売された「トップ」では、1990年に発売されていた主洗浄成分が石油原料の「ハイトップ」と比較して、51%も削減(※)することができました。そしてその51%削減は、現在の「トッププラチナクリア」にも受け継がれています。

※洗濯1回当たりのCO2の排出量(1990年を100としたときの相対値)。

洗濯1回当たりのCO2排出量の比較
2009年に発売された「トップ」
トッププラチナクリア

このような技術や取り組みについて評価していただき、2007年に地球環境大賞を受賞しました。また、2008年には環境大臣からエコ・ファースト企業の認定を受けました。

業界でも先駆けて、エコ・ファースト企業の認定を受けたのですか。

エコ・ファースト制度ができたのは2008年ですが、当社は“製造業としては初めて”認定を受けました。キリンビール株式会社様などと一緒に、6月24日にエコ・ファーストの約束をして認定を受けたのです。

製造業というのは、環境への負荷をかけてしまう側に立っているのですが、できる限り負荷をかけないように努力することが必要です。また、当社の工場などにおける削減だけではなく、商品を通じてご家庭で使用していただいたあとのCO2排出量やゴミの削減にも積極的に取り組んでいることが、特に認めていただいた点ではないかと思います。

エコ・ファースト企業も現在(2011年6月現在)38社に増えているのですが、ライオンはエコ・ファースト推進協議会の副議長会社として(※議長会社はキリンビール株式会社)、中心的な役割を担っています。環境省とのコラボレーションや、エコ・ファースト推進協議会を通じて異業種交流にも盛んに取り組んでいます。

エコ・ファースト企業の認定を受けたことで、環境省に認めていただいたという自信を持つ、エコ・ファーストの約束をしたからには努力するという両方の点でメリットがあります。先述した「社内の環境意識醸成」の部分にも該当しますが、エコ・ファースト企業なのでしっかりとした取り組みをしようという意識の向上にもつながります。


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