東日本高速道路株式会社

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自然に環境に関する取り組みは始まった

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東日本高速道路株式会社

続いて、自然環境に及ぼす影響の低減に向けた取り組みについてお聞かせください。

当社では、将来にわたり自然環境と共存共生していく高速道路を目指して、野生動植物や自然環境保全策を道路整備に反映させる「自然にやさしい道づくり(エコロード)」を先進的に進めています。この「エコロード」は、自然環境への影響を緩和するだけではなく、道路内に新たな生息・生育環境を創出し、地域における生物多様性の保全や生態系の質的な向上を図っています。

「エコロード」の進め方としては、道路の建設は自然環境へ大きな影響を与えてしまう恐れもあるため、道路による自然環境への負荷を緩和する「マイナスの低減」と、道路空間を利用して環境空間を創出する「プラスの付加」という、2つの考え方を基に進めています。

この「マイナスの低減」のなかには、「回避」「低減」「代償」という3つの方策があります。

「回避」「低減」「代償」の3つの方策

「回避」というのは、道路が自然環境に及ぼす負荷を避けることを意味します。例えば、自然豊かなところに道路を建設する際に、動植物の生息・生育環境に直接的な影響がないように、その地域・区域を避けて路線の計画を行うやり方です。

ひとつ例を挙げると、山形自動車道では、計画では山裾を切り開いて、直線の道路を造る予定だったのですが、谷側に路線をシフトさせて改変することを避け、自然環境豊かな地域の保全を図りました。

回避が環境保全で最も有効な方法なのですが、それが可能なところはそう多くはないのです。そこで、自然環境に及ぼす負荷を最小化したり、改変した自然環境を修復・再生したりする「低減」という方策を採用します。

道央自動車道(北海道)では、湿性植物のミズバショウの生育環境を保全する目的で、湿原内に百数十メートル以上の橋梁(ポロト橋)を設置しました。長い橋であるため、途中で橋脚を立てる計画でしたが、そうするとミズバショウの生育環境に影響を及ぼしてしまう恐れがあります。そのため、ここでは湿原内に橋脚を立てない構造を採用しています。

道央自動車道 (左)ポロト橋 (右)改変を抑え、既存林を残した区間

また、同じ道央自動車道の中で、傾斜地に沿った道路線形などを採用するにより、改変を極力抑制し、自然環境保全と周辺地形との調和を図っている区間もあります。単に植樹による緑化だけではなく、道路が建設される前から繁っている樹林や樹木の中には、道路緑化を行ううえで有効に活用できる樹木や景観的に貴重な樹林があるため、樹林の生育する環境をなるべく変えず、貴重な既存林を残したり、利用可能な樹木を移植したりすることで活用しています。同じような事例ですが、東北自動車道滝沢ICでも既存林を有効に活用しています。

東北自動車道 滝沢IC

けもの道の分断により、道路内に侵入して事故に遭う動物も増えているのではないですか。

例えば、山を分断するとけもの道が途切れてしまうので、道路の上に橋(オーバーブリッジ)を架けたり、道路の下に「ボックスカルバート」と呼ばれる横断用の小さなトンネルを設けたりして、動物の移動経路を確保しています。色々な対策を行っていますが、野生動物が侵入することはあります。そのため、動物侵入防止柵やドライバーに注意喚起するための標識の設置なども行い、車両との衝突事故を防止するさまざまな対策を施しています。

(左)ボックスカルバート (右)横断する排水路を利用

例えば、中・小動物に対しては、立入防止柵の下部閉塞や上部には柔らかい素材の網を採用した「しのび返し」を設置するなどで対応しています。

また、大型動物に対しては、立入防止柵の高さを上げて対応しています。北海道ではシカが多いので、「アウトジャンプ」と呼ばれる土壌の台を設け、仮に立入防止柵を飛び越えて高速道路付近に侵入しても容易に戻ることができるような脱出支援策を施しています。

立入防止柵の嵩上げ(左)とアウトジャンプ(右)

鳥類については、飛翔高度を確保できるように、衝突防止ポールや誘導用デコイを設置し、道路内への侵入を防いでいるところもあります。

衝突防止ポール(左)と誘導用デコイ(右)

部分的・局所的な対策では、ほかの箇所から道路内に入るケースもあるので、幅広い場所で長いスパンで取り組むことを基本としており、対策を施した箇所での動物と車両の衝突事故は以前よりも減少しています。

3つの方策の「代償」とはどのようなことを行うのですか。

「代償」とは、既存の環境レベルを改変してしまうような場合に、近隣に同等の環境を整備することをいいます。例えば、千葉県の館山自動車道では、トウキョウオオサンショウウオが産卵する池が道路を建設するうえで支障となってしまったため、代替産卵池を近隣に整備しています。現在でも、産卵が確認されています。また、貴重な植物が見つかった場合に、近隣の環境が類似した場所へ移植することも「代償」の方策です。

代替産卵池

「マイナスの低減」の3つの方策以外に、「プラスの付加」という方策もあります。これは、インターチェンジ・サービスエリア・パーキングエリアなどの道路敷地空間も活用し、新たに樹林や水辺などの動植物の生育・生息空間を「創出」することを意味します。「ビオトープ」が良い例だと思います。

すでにビオトープを形成している場所はあるのですか。

あります。青森自動車道の青森中央インターチェンジでは、周辺に生育していた絶滅危惧種のメダカなどをはじめ、動植物が生息・生育できる場所を整備しています。ここでは、近隣の大学や高校の方々と一緒に、年2回、ビオトープの管理作業を行っており、作業の終了後には、普段目に触れることができない希少動物の観察会も実施しています。また、神奈川県の横浜横須賀道路では1990年から「ホタル水路」というものを整備して、モニタリングと管理作業を継続的に実施し、毎年ホタルなどの昆虫や鳥類の生息確認を行っています。

青森自動車道の青森中央インターチェンジのビオトープ
(左)整備直後のホタル水路 (右)ホタル水路の現在の状況とゲンジボタル


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