カゴメ株式会社

メーカー

環境方針の要となる4つの柱

08_kagome_grph_05

カゴメ株式会社

凛々子(りりこ)というトマトを開発されたそうですが、どのような特徴があるのですか。

凛々子(りりこ)とは、“トマトジュース専用の品種群のブランド名”です。そのため、特定の一品種を指すものではありません。凛々子も当社で開発されたのですが、生食用のトマトのように親しみを持ってもらえる、女性の方を意識した名前が付けられました。

トマトジュース専用の品種群「凛々子(りりこ)」

イタリア語でみずみずしさを表す「Lyrico」と、トマトに含まれる色素である「Lycopin(リコピン)」を合わせたのが由来です。凛々子も数年ごとに新たに改良した品種を導入して、より良い製品づくりのために絶え間なく努力を続けています。

前述したとおり、凛々子には、収穫の際にヘタが茎に残るジョイントレスという特徴もあります。軽くひねるだけでもぎ取ることができるので、農家さんからは収穫しやすいと好評です。また、トマト自体にはヘタが残らないので工場で廃棄物を出さないし、異物として製品に混入する恐れもないというメリットもあります。

当社では、加工用品種である凛々子の種子や苗を契約農家さんに提供して、栽培してもらっているのですが、その際に守ってもらうことを明確にお伝えしています。

農家さんとは収穫の際には一定の品質基準を満たしたトマトを全量買い上げる、契約栽培方式を採用しています。基本的に、つくっていただいたトマトは相場に左右されることなく、あらかじめ決めた単価で全量を買い取っています。ただし、当社で要求している一定の基準を満たした品質のものという条件は設けており、その品質に達しないものについては買い取りません。

そのようにして、一定品質以上の赤いトマトがジュースの原料として使われていることを保証しています。

凛々子は、一般のトマトとはどのような点で異なるのですか。

生食用トマトの中身は一般的にピンク色です。凛々子の中身は真っ赤なのですが、その源である色素のリコピンの量が生食用のトマトの約3倍も含まれています。

また、畑でもぎ取った後に工場で搾汁するのですが、工場に運ぶ際に箱の中で傷が付くと、そこからカビが生えて腐ってしまうことがあります。凛々子では、ある程度の衝撃に耐えられるように、皮が厚く、実も固いという特徴があり、傷が付きにくくなっています。そのまま食べるとなるとかなり固いトマトなのですが、工場で搾汁することにより、日本のスタンダードと言える、高品質のトマトジュースになります。

このように、凛々子は一般のトマトとは“別物”と考えていただいた方がいいかもしれません。凛々子は温室やビニールハウスではなく、露地栽培です。色見本を基に、一定以上の赤さに達した場合に収穫するようにしており、畑にある段階で真っ赤になったものだけを工場に運んでいます。

凛々子の開発において、苦労した点などはありましたか。

当社は、トマトをリファインしていくリーディングカンパニーということもあり、品種開発の研究をずっと続けています。研究段階でベストなトマトだと判断しても、実際に畑でうまく育つとは限りません。よく研究者たちは、「画期的な新品種は10年にひとつモノになるかどうか」ということを話しています。毎年100から200ものテストを実施しているのですが、開発に成功したと言えるのはほんのわずかです。そういう意味では、試行錯誤の連続です。凜々子も長い期間の研究を経て導入されたものです。

農薬や肥料についても環境への配慮がなされているのですか。

カゴメは安心・安全・環境に配慮した栽培思想のもと、畑の土づくりから指導し、過剰な化学農薬、化学肥料を使用しない栽培に取り組んでいます。

まず農薬についてですが、当社では、実際に使用する農薬について、カゴメ独自の「農薬自主基準」を定めています。この農薬自主基準では、生産性と消費者・生産者・環境に配慮しながら、独自に定めた安全基準により、栽培に使用可能な農薬をさらに絞り込んでいます。

トマトを例にとると、カゴメの農薬自主基準で使用可能な農薬の数の割合は、法的に使用可能な農薬の数に対して、約30%に限定し、正しい農薬指導と安全性チェックを徹底して行っています。

また、肥料についても有機質肥料である堆肥・緑肥を積極的に使用し、化学肥料使用量を抑制する土づくりを推奨しています。

当社として推奨する肥料の与え方を示すとともに、フィールドマンと呼ばれる担当者が契約農家さんを個別に訪問する、あるいはJA経由で集会を開催するなどの形で、きめ細かく栽培指導を行っています。このようにコミュニケーションを密に取りながら、当社の農法を実践していただくことで、何か問題が起こったときにもすぐに対応や改善が可能です。

「りりこわくわくプログラム」という活動をなさっていますが、どのような活動なのですか。

「りりこわくわくプログラム」とは、毎年、トマトの苗木ができる春ごろに、全国の4,000校ほどの小学校や幼稚園、保育園に凛々子の苗を無償で提供して育ててもらう、1999年からスタートした食育支援活動です。現在(※2013年8月現在)まで、延べ50,000校ほどに提供を行いました。

この活動を通じて、命を育てることの大切さや収穫の面白さなどを知ってもらい、教育に活用していただくことを目的としています。

苗を無償で提供するわけですが、それで終わりというのでは意味がありません。そこで、苗を使って先生には授業をしていただきます。例えば、育てたトマトを使って料理をつくり、食べることだけでなく、それにプラスアルファの内容を一貫して授業としてもらうなどです。トマトの苗を配るだけではなく、食育の一環として役立てるといった、広がりのある活動にしてもらいたいというわけです。

「りりこわくわくプログラム」では授業内容を募集するだけでなく、実際にどのような授業だったのかという栽培レポートを募集しています。毎年12月ごろに応募を締め切り、3月ごろに優秀校(凛々子賞)を発表しています。

「りりこわくわくプログラム」で受賞されたもので、ユニークな取り組みはありますか。

印象的だったのは、2011年度に受賞した福島県南会津郡の小学校の取り組みですね。東日本大震災の影響も心配されるなか、一生懸命苗木を育ててくれました。収穫した凛々子でパンやジャムをつくって、文化祭でカフェをオープンして地域の方々食べてもらうという取り組みがありました。大変な状況下でも取り組んでくれたということで、特に印象に残っています。

1999年からスタートした「りりこわくわくプログラム」は、今年(2013年)で15年目を迎えました。2011年からは東北の被災地にも積極的にトマトの苗を配布し、復興支援にも取り組んでいます。

温室での生鮮トマトの栽培でも、環境負荷の低減に取り組んでいるそうですね。

前述した在来種の蜂の使用により生物多様性に配慮しているだけでなく、使っている農薬、エネルギー、発生する廃棄物などについても環境負荷低減に取り組んでいます。

温室内は土を使わない施設栽培を採用しており、外気などの影響を受けにくいので病気や害虫が発生しないと思われる方も多いようですが、そうではありません。当社菜園では、病虫害の源泉となるものは外部から極力排除し、室内の発生状況をモニタリングして早急に対策を行うようにしています。また、農薬の代わりに害虫の天敵を導入して駆除するなど、さまざまなことを実践し、農薬の使用を極力抑えています。

施設栽培を採用した温室の様子

また、菜園では外部気温が大きく影響することから、ボイラーの熱を使用し、適切な温度を保っています。ボイラーで使用する燃料には、石油や天然ガスなどの化石エネルギーのなかで相対的にCO2排出量が少なく、燃焼時の排出ガスも極めてクリーンなエネルギーといわれているLPガスを使用し、その際発生するCO2は回収し、トマトの生育に必要な光合成の促進に有効利用しています。

さらに、一部の菜園では太陽光発電所から一部電力を受電し自然エネルギーの活用をするなど、複数のエネルギー・CO2削減の取り組みを進めています。トマト収量の増加により、エネルギー効率も向上しています。

廃棄物においては、菜園にて最も多くを占めるのは、栽培時に出る葉や茎や施設栽培にて使用するスラグですが、これらを堆肥や土壌改良材へ再資源化しています。

なお、ほかにも、当社の子会社であるカゴメ不動産では、全国の遊休地3カ所に大型の太陽光パネルを設置し、合計で6MW(※一般家庭約2,000軒の年間消費電力量に相当)の発電電力全量を電力会社に売電する事業を開始しました。この事業は来年度から本格的に始動しますが、自然エネルギー(太陽光発電)を利用した売電事業を通し、二酸化炭素の排出量の削減に取り組んでいきます。

また、新たな生産ラインを設けた当社の茨城工場では、大型の太陽光発電システムを導入し、発電した電力を生産に活用しています。今回は新規製造ラインの設計段階で計画したため、太陽光発電を導入できたのですが、既存の工場に導入するとなると、投資効率的には難しいのが現状ですね。


関連記事一覧

タグ