カゴメ株式会社

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環境方針の要となる4つの柱

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カゴメ株式会社

環境の取り組みについて、今後の方針をお聞かせください。

まずは、今後の環境における方針の根幹である、企業戦略の現在の状況についてお話しします。

当社は、ローカルブランドであった「愛知トマト株式会社」から、現在のナショナルブランドである「カゴメ株式会社」に社名を変更して、2013年で50年を迎えました。そこで、「Next 50」と呼ばれる新たな中期経営計画が今年度(2013年度)からスタートしています。この「Next 50」には、「次の50年で当社はグローバルブランドを目指していく」という意味が込められています。

2013-15年度はそのための準備や布石のための重要な3年間だと言えます。その鍵となる考え方が、「カゴメの成長は社会の成長とともに(質的成長の共創)」というものです。これは、数多くの問題を抱えている社会が健全に成長していかなければ、カゴメという企業も成長していかないということを意味しています。

ステークホルダーの皆様とともに社会的問題を事業という形で一緒に解決していく、いわゆる「CSV(Creating Shared Value)」の発想です。それを、国内だけでなくグローバルに実現するためにグローバルサステナビリティ部という部署が、今年(2013年)の4月に新設されました。

この部署の業務には、環境対応も含まれています。理由は、質的成長の共創のベースとなる考え方のひとつが、「人・社会・地球環境の健康長寿に貢献する」というものであり、「商品を通じて、お客様の健康にも貢献していきたいし、社会の問題も解決したい。それには、そもそも地球環境が悪くなってしまうとそのようなことを実現できない」という考えがあるからです。ゆえに、環境の方向性も質的成長の共創を基に今後進めてまいります。

なお、コミュニケーションを担う本部内にグローバルサステナビリティ部があるため、企業の取り組みについての情報発信も担当しています。

現在、当社のコーポレートサイトやCSRレポートでは、海外のグループ会社の取り組みについてはほとんど触れていません。各事業会社でも環境への取り組みを行っているのですが、グループ全体でうまく連携したものになっていないのが現状です。今後は、グローバル規模でグループ一体となって進めることができるようにしたいと考えています。

カゴメのグローバル展開とはどういうものなのですか。

残念ながら、日本国内の人口はこのまま行くと減少の一途をたどることになります。胃袋の絶対数が減るというのは、食品メーカーにとっては大きな逆風だと言えます。

これから発展していく新興国というのは世界に数多くあるのですが、それらの国に対しカゴメが保有する技術やノウハウを投入して価値を創造し、現地の方に喜んでいただけるという潜在的なポテンシャルは大きいはずです。試行錯誤を繰り返しながら進めていきたいですね。

その際に、現地の方々とともに社会の問題を一緒に解決できるようになれば、信頼される企業となり、サステナブルな事業を行うことができるでしょう。そのような考え方をベースに持つことが必要なのですが、グローバルに展開している世界的な企業では、すでにそれを実践しています。カゴメも、そのような企業から積極的に学んでいきたいですね。

トマトジュースの販売は80周年を迎えたそうですね。味などは、今のものとは違うのでしょうか。

推測になりますが、使用しているトマトの品種やトマトの組み合わせ、製造方法の進歩の影響により、味は今とは違うと思いますね。

そもそも、日本に伝来した江戸時代のころのトマトは、かぼちゃのような形をしており、食用ではなく観賞用の植物だったそうです。それを、カゴメの創業者が最初はトマトソースに加工して、日本に広めていきました。しかし、当時はあまり売れなかったそうです。

そのトマトソースからトマトケチャップへの加工を経て、トマトジュースが誕生しています。トマトケチャップの原料も、当初は欧米で栽培されたトマトの品種が使われていたのですが、日本人向けにアレンジしていくなかで、さらに日本人の味覚や嗜好に合ったものを追求するために品種改良や品種の組み合わせが行われてきました。トマトジュースも同様です。このように、昔からカゴメでは試行錯誤を続けてきたのです。

カゴメトマトジュース

組み合わせというお話がありましたが、使うトマトは一種類だけではないのですか。

トマトジュースで使う凛々子は前述のようにトマトジュース専用の品種群のブランド名であり、必要に応じて複数の品種を使ってトマトジュースをつくります。また、トマトケチャップは国産のトマトと海外でつくられたトマトペーストを原料としています。

カゴメの求める品質のトマトペーストを世界各地での製造に関わりながら調達し、それを多様な製品規格に合うように適切に組み合わることによって、いつでも一定の味と品質を保つ商品をお届けできるというのも、当社の強みのひとつです。世界各地に調達拠点を持っているので、病害などのリスクをヘッジすることにもつながります。

貴社の素晴らしい取り組みは、日本政策投資銀行(DBJ)から最高ランクの環境格付の取得という形で評価されていますね。

2009年に、日本政策投資銀行(DBJ)様より生物多様性の取り組みやエネルギー削減等の取り組みを評価いただき、東海地域初の最高ランクをいただきました。また、2012年には、環境格付だけでなく、従業員の健康配慮について評価いただき、食品業界初・東海地域初の健康経営格付でも最高ランクという評価をいただきました。

カゴメでは地産全消という取り組みが行われていますが。

当社では、各地の特産品をカゴメブランドの商品にして、全国に広めるという取り組みを行っています。例えば、「カゴメ野菜生活100」では、沖縄のシークヮーサーや北海道のハスカップなどを使った期間限定商品によって、地産地消ではなく「地産全消」という形で、地方で採れた野菜や果物の美味しさを日本全国の方にお届けして召し上がっていただくという活動を展開しています。

「カゴメ野菜生活100」の期間限定商品

日本の農業は現在厳しい状況にあるのですが、その理由のひとつとして地方で採れた野菜や果物が知られておらず、買ってもらっていないということが挙げられます。そのような問題を当社が商品という形で解決すれば、地方の活性化や農業へ貢献することにつながると考えています。これも、CSV(共有価値の創造)の一環としての意味が含まれるのではないでしょうか。

今後はグローバルな取り組みを進めていくとお話ししましたが、国内でもさまざまな問題を抱えているので、当社ができること、当社が持つ強みを生かして何ができるのかを今後も考え、事業と結び付けてサステナブルに取り組んでいきたいですね。

最後に、これだけは話しておきたいということはありますか。

当社は、「農」に近いところにいる食品メーカーだと自負しています。

日本の農業も、世界の農業も、現在さまざまな問題を抱えています。世界規模の話で言うと、将来的に人口が爆発的に増えていくなかで、食糧難や水資源の問題が懸念されています。

そのような状況下で、カゴメがグローバル展開を進めるうえで、何か貢献できることがあるのではないかと考えています。それに向けて、当社では取り組みを強化していきたいですね。その際に、当社だけでできることは限られています。「質的成長の共創」で申し上げたとおり、幅広いステークホルダーの方々と協力していかなければ、難しい問題になるほど解決することはできないでしょう。ステークホルダーの方々と議論すると、当社にとっても気付きがあるはずです。例えば、カゴメ社内では当たり前だと思っていたことが、別の価値を持つものになるということはたくさんあります。

そのような連携をしながら問題を解決し、カゴメも成長することができればいいですね。

日沼様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。今後のグローバルな取り組みに期待大です。


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