王子製紙グループ

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2015年度に向けた環境に関する目標「環境行動目標2015」

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王子製紙グループ

国内社有林を活用した取り組みもありますが、そちらについてもお聞かせください。

国内の植林を開始したのは戦後ですが、当時は主にスギを植えていました。現在(※2012年1月現在)、当社では日本各地に約700ケ所もの社有林を持っており、それらを合わせると大阪府と同じ面積である19万ヘクタールになります。王子製紙グループでは、製紙原料の確保や製材用として活用するのみではなく、間伐による健全な森林づくり、さらには生物多様性を保全するという考えに基づいた森林保全をしています。

国内社有林の分布図

なぜ保全するのかについては、森林の役割を理解する必要があります。森林にはCO2の吸収や水源涵養(かんよう)など、多面的な機能があるのです。

光合成により地球温暖化の原因であるCO2を吸収し、O2を放出します。例えば、水源涵養といって、森林内の土壌は水を蓄え、河川に流れ出る水の量を調整しています。また、土壌の下は木が根を張り、柔らかい状態が保たれているので、スポンジのように水を吸収してくれるわけです。そのため、降雨などで発生する土壌の流失や土砂崩壊が抑えられます(※緑のダム)。

さらに、多種多様な動植物を育むことで豊かな生態系(生物多様性)を形成し、人間が自然と触れ合う、癒しの空間をもたらしてくれます。

森林保全は、これらの森林の機能が発現されるようになることが重要です。王子製紙グループでは、森林保全などの費用として、年間約5億円を投じています。

社有林のうち、約60%(※)は天然林なのですが、当社では独自に「環境保全林」を指定し、森林の持つ多面的機能、例えば生物多様性を維持するための取り組みも行っています。具体的には北海道宗谷郡猿払(さるふつ)村の社有林では、国際自然保護連合と環境省により絶滅危惧種と指定されている日本最大の淡水魚である「イトウ」の保全を目的に、環境保全林の指定に加えて、NPO・行政・研究者などと共同で2009年に「猿払イトウ保全協議会」を設立しました。本協議会では、周辺の森林所有者への働きかけ、自然学校や保全推進のためのシンポジウムの開催などを行っています。

※2010年3月時点で、天然林に林道などの5%を含めた場合。

国内社有林の有効利用として、自噴する湧泉水を加熱せずにボトリングし、製品として販売しています。これは、昨年(2011年)の東日本大震災では、被災した方々への支援物資のひとつとしてお送りしました。

「支笏(しこつ)の秘水」と「北海道」

国内社有林では、「王子の森・自然学校」という活動が開催されているようですね。

当社では、自然体験型環境教育プログラム「王子の森・自然学校」という活動を、2004年から毎年、北海道・栃木県・静岡県・広島県・宮崎県の5ケ所の国内社有林で行っています。

これは、王子製紙グループのインフラを有効活用する目的もあり、国内社有林を舞台に、小学生や中学生から100名ほどの参加者を募り、毎年夏休みの時期に2泊3日ほどをかけて、自然(森)について学んでいただく活動です。山林観察やツリークライミングなどの自然体験だけでなく、製紙工場の見学も行います。参加を希望する方は毎年増えており、競争率は10倍以上となっています。ただし、昨年は東日本大震災の影響もあって開催することができませんでした。

「王子の森・自然学校」では“自然と人との結びつき”について学ぶ、“工場と自然との結びつき”について学ぶ、“人と工場との結びつき”について学ぶという、3つのテーマが設けられています。

実際に参加したお子さま方からは、「木を伐採するのは、実は森林の保全に役立っていることを実感した」という声をたくさんいただきます。また、保護者の方々から「製紙産業というのは環境に対して負荷をかけているイメージがあったけれども、植林活動や森林保全活動を学んだ子どもたちに逆に教えられた」という声もいただいております。このように、製紙産業のことや私どもが取り組んでいる森林保全活動について、「王子の森・自然学校」を通じて多くの方々に知っていただきたいと思います。


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