三井物産株式会社

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社有林も「三井物産環境基金」もすべては持続可能な社会の実現のために!総合商社ならではの取組みに迫る!

出典:G7伊勢志摩サミット公式ホームページ

伊勢志摩サミットにおいて「三井物産の森」の木材が使われました
(出典:G7伊勢志摩サミット公式ホームページ)

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“未来作り”のための活動・研究にかかる予算を支援 :: 三井物産のCSR・環境活動

「三井物産環境基金」とは、どのような取組みなのでしょうか?

近藤氏:持続可能な社会の実現に向けた様々な活動を実施している団体を支援するプログラムとして、2005年7月に設立しました。

助成プログラムは、NPOやNGOが地球環境課題の解決のために実践している活動を支援する「活動助成」と、大学の研究所などが進めている環境研究を支援する「研究助成」の2種で構成しています。それぞれ年に1回ずつ募集をかけ、応募していただいた案件を客観的かつ公正に審査し、選ばれた活動や研究に対して助成金を出すという仕組みです。これまで支援した案件は500件以上、支援額は総額約53億円に上ります。

「三井物産環境基金」の特徴の一つは、助成期間が3年間までと長いところです。1年限りで終わってしまいその後のプランが見えていないものではなく、先を見据えて長期的に続いていく活動や研究を援助したいという思いがあります。その基準をクリアしていれば、金額に上限を設けていません。

2005年の設立から10年以上続けていらっしゃるのですね。それだけ大規模かつ長期的な支援を継続されてきた中で、これまでに助成してきた活動について教えてください。

近藤氏:「活動助成」において、最近のものでケニアでの取組みを例に挙げてみましょう。絶滅の危機に瀕しているアフリカゾウの密猟を防ぐ取組みをしている団体が、マサイマラ国立保護区で進めている、人間とゾウの共存を目指す活動を2014年から支援しています。

占部氏:ケニアの保護区における密猟問題は深刻です。製炭業や焼き畑のための森林伐採により住処を失ったゾウが、人里に降りてきて人間の作物を荒らし、生活に困窮した人々が、森林伐採や象牙を狙ったゾウの密猟を繰り返すという悪循環が起きているためです。そこで、住民の生活を豊かにすることで、密猟の原因を根本から改善し、ゾウとの共存を目指すというこのプロジェクトが始まったのです。具体的には、ゾウが嫌がるミツバチの巣をそれぞれの生活区域の間に設置し、ゾウが人里に降りてこないようにしました。作物が守られることに加え、養蜂による収入が得られることで住民の生活は潤い、森林伐採や密猟が防げるのでゾウの住処が守られるという循環型の解決法であったことが助成の決め手になりました。現状を打開するだけではなく、生活を向上し、将来に広げていく構想が練られている部分が当基金の方針と合致した象徴的な案件だと思います(図5参照)。

図5:人間とゾウの共存プロジェクト「Mara Conservancy」
図5:人間とゾウの共存プロジェクト「Mara Conservancy」

近藤氏:国内では、富士山の頂上に建てられた測候所を活用し、大学などが行う気象や永久凍土の研究を支援しているNPOに助成しています(図6参照)。様々な大学の教授や学生が集まり、夏の間だけ研究をしています。私も昨年モニタリングに行ってきました。

占部氏:富士山のように、周囲に山脈などがなく1つだけ突き抜けるように高くそびえている山は希少らしく、貴重なデータを取得出来る場所として国際的に注目されているそうです。単純な天気予報ではなく研究者のための基礎データの取得や、学生の人工衛星の実験など、山頂での研究は多岐に亘っています。

図6:富士山測候所を活用する会
図6:富士山測候所を活用する会

「研究助成」の実績についても教えてください。

近藤氏:実績の一つとして、金沢大学の牧輝弥准教授が取り組んでいる「バイオエアロゾル(空中を浮遊する微生物)」が引き起こす人体への影響を解き明かす研究を支援しています。助成を始めてから、牧准教授がバイオエアロゾルの中に納豆菌に近い菌を発見し、その菌をもとに納豆を作るというユニークな展開がありました。

占部氏:完成した納豆は、石川県の金城納豆とのコラボ商品「そらなっとう」になりました。当社も商品化と販路拡大のお手伝いをしたのですが、助成案件がビジネスにつながった事例の一つです。

近藤氏:助成を決めた時点ではこのような結果に繋がるとはあまり想像していませんでしたので、とても面白い取組みだと思います。他にも、特別天然記念物として保護されているアホウドリを、伊豆諸島の火山島から小笠原諸島へ移し、絶滅を回避する研究を行っている山階鳥類研究所を支援しています。5~6年続け、今年初めて小笠原諸島でヒナが誕生したのです。実はヒナが発見された瞬間、私もその場に居合わせまして、自分のことのように嬉しかったですね。

近藤氏

活動や研究の現場に赴いて自分の目で見る経験は貴重ですし、支援する上でも重要なことですね。

近藤氏:そうですね。現地に行くことで、先生方の苦労も知ることができます。電気やガス、水道のない場所も多いですし、そこで長い間活動することは決して簡単ではありません。それだけの熱意を持って取組まれていることに感銘を受けます。

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