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WWFのマークはなぜパンダ?‐WWF発足のきっかけ

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WWFのマークにもなっている、ジャイアントパンダの保護活動も行われているのですか。

はい、ジャイアントパンダの保護活動は、1980年代からスタートしました。生息地に海外の調査チームを派遣して野生のパンダの生態調査を行い、それから保護や研究の拠点となる保護センターの建設を支援しました。

その後かなりの時間が経過し、中国国内にWWFの事務所が設立されてからも、ジャイアントパンダの生態に関する研究や生息地域の保全活動を継続しています。

 ジャイアントパンダ

現在、野生のジャイアントパンダの個体数は1,600頭ほどといわれています。しかし、まだまだ生態や生息域については謎も多く、すでに分かっている生息地も完全に保護下に置かれているわけではありません。

これらの地域の多くは経済的に豊かなところではないので、暮らしのために地元の人たちが森に入って、木を伐採することなどが行われてもおかしくない場所です。ですから、地域の住民の生活にも配慮しながら、勝手にパンダが生息する森を開発したりすることのないように、保護活動の支援を進めています。四川での地震では、こうして作った保護活動の拠点がいくつも壊滅してしまったのですが、地域の住民の方々に活動を深く理解していただいたことや、現地のスタッフの頑張りによって現在は回復しつつあり、活動もいい形で継続していると聞いています。

代表的な絶滅危惧種として、どのようなものがいるのですか。

カバ・ジャイアントパンダ・アフリカゾウ・サイなど、皆さんが知っている動物の多くが、絶滅危惧種に該当するのではないかと思います。現在、絶滅の危機にある野生の動植物は17,000種~18,000種ほどにもなります。

 《絶滅の危機にある動物》クロサイ
 《絶滅の危機にある動物》チーター

そういえば、メダカも絶滅危惧種だという話を聞いたことがあります。

メダカも日本のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されていますね。日本国内の身近な生物のなかにも、絶滅の恐れが高い野生生物が増えてきているのだといえます。つまり、それだけ野生生物の生きる自然が失われているということでもあります。

一般に、絶滅の恐れがある動植物の話をする場合に大切なのは、「ある動物が、地球上から一頭もいなくなってしまう」ということだけではありません。まだたくさんいると思われる動物でも、絶滅は大きな問題なのです。このような話でポイントとなるのは「地域的な視点」です。

例えば、A国・B国・C国という3つの国に、ある動物が生息しているとしましょう。その動物が、B国とC国内ではいなくなりました。絶滅したのです。しかし、A国ではまだ姿を見ることができます。この場合、その動物は地球上から絶滅したことになるでしょうか。もちろん、絶滅したことにはなりません。

しかし、生息していた地域は確実に減っている。数も減っている。A国にはまだいるから大丈夫ということでは決してないのです。B国とC国では、絶滅を引き起こす何が起きたわけで、それは、その動物が確実に絶滅に近づいているという証(あかし)です。

これを単に「絶滅しなければいい(=1頭でも生きていればいい)」という視点だけで考えてしまうと、B国とC国で起きた問題、つまり危機のプロセスが見落とされてしまうことになります。

野生生物の保護は、「最後の1頭が生きているか死んでいるか」ということが問題なのではありません。そのような事態になってしまったら、ほとんど手遅れなのです。

動物や植物が、その地域の自然環境のバロメーター的な役割を担っていることは先述しました。どこに、どんな生物が、どのように生息しているのかを可能な限り細かく観察し、その変化を追っていかなければ、動物であれ植物であれ、一つの種(しゅ)を保存し、未来につないでいくことはできないのです。

絶滅の危機にある生物を、人工的に増やすというのは、難しいのでしょうか。

そうですね。一度絶滅の危機に瀕した生物を人工的に増やし、野生に戻すという取り組みは、とても難しいと思います。そもそも、野生に戻すといっても、単に外に放すだけでは意味をなしません。

放してみても、その動物が生きていけるだけの生息環境が十分な広さで確保されていなければ、いずれ姿を消してしまうでしょう。繁殖技術ばかりが注目されがちですが、本当に野生への復帰を目指すのであれば、野外に放したあとのことをしっかりと考えなければなりません。

また、どのような状態であれば野生に復帰したことになるのか、繁殖さえすれば十分なのか、何世代もその地域に生息し続ければいいのか、そのような点についてもしっかり考えて基準や計画を作る必要があります。これは、実際には何年もかけて行われるべきものですが、日本ではようやく議論が始まるところではないかと思います。

いずれにせよ国内には、沖縄や小笠原諸島などに代表される、絶滅の恐れが非常に高く、なおかつ日本固有の野生動植物が数多く生息している地域がたくさんあります。こうした地域でどのように環境を保全し、絶滅危惧種を守っていくのか、国としてどのように対応していくのか、これらの点についても数多くの課題がいまだ残されていると感じます。


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