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WWFのマークはなぜパンダ?‐WWF発足のきっかけ

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森林だけでなく、サンゴ礁の保全活動など、海洋に関する取り組みもなさっているようですね。

はい。海については、漁業問題のような資源や消費にかかわる問題と、サンゴ礁のような生物多様性の豊かな海洋生態系の保全という、2つの側面から取り組んでいます。その大きな目標は、海の自然環境を保全しながらも資源を上手に利用していく、「持続可能な社会」を作ることにあります。

日本での代表的な取り組みとしては、石垣島(沖縄県)の白保地区にWWFが2000年に設立した、サンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」での活動があります。

この石垣島の白保には世界最大級のアオサンゴの大群落があり、それを保全することを目的にセンターを設立しました。この設立の資金は、すべて「サンゴ礁を守りたい」と願う、一般の方々にお寄せいただいた寄付によるものです。

「しらほサンゴ村」が設立されてから今年(2010年)で10年目ですが、海域での海水温度の調査やサンゴの海に流入する赤土の調査、サンゴを死に追いやることのある白化現象などの調査を行ってきました。地元の方は10年以上前の海の姿をよくご存知ですが、この白保の海域でも全体的に見ると、サンゴは以前に比べ弱ってきているようです。

 白化したサンゴの様子

白化現象というのは、サンゴがストレスを感じると起きます。例えば、海水温の上昇が原因の一つです。サンゴの生育に適した水温よりも海水の温度が高くなると、この白化が発生します。

サンゴというのは動物と植物が共生している生物で、褐虫藻(かっちゅうそう)という体内で共生している藻類から、光合成によって生み出された栄養分をもらって生きており、この褐虫藻の色がサンゴに彩りを与えています。

しかし、海水の温度が上昇すると、褐虫藻がサンゴから逃げ出してしまうことがあります。そうなると、サンゴは色素を失って白っぽくなり、栄養不足に陥って弱ってしまいます。これが白化現象です。

海水温が下がれば、褐虫藻がサンゴの体内に戻ってくることもあるのですが、戻らなければサンゴはそのまま死んでしまいます。また、褐虫藻が戻ったとしても、これが繰り返されると、サンゴ自体が以前よりも弱ってしまいます。

この問題を解決するのは、簡単なことではありません。

海水の温度が上がった場合、これを人為的に下げることは、まず不可能です。それではどうすればよいかというと、普段からサンゴが健康を維持できるように様々なストレスを減らし、白化しても耐えられるように配慮するしかありません。

この減らすことが可能なストレスの一つが、「赤土」です。

赤土とは、琉球列島に見られる粒子の細かい赤茶色の土なのですが、亜熱帯特有の強い雨が降ると地表から流れ出し、水路や川を伝って海に流れ込み、海水の透明度を下げてしまいます。そのため、サンゴが光合成をすることができなくなってしまい、白化現象のような状況が起こると考えられています。

 海を赤く染める赤土

赤土自体には毒性はないのですが、この土は粒子が細かいので、一度水に混ざるとなかなか沈殿せずに海水を濁らせてしまいます。そうなると、海中に太陽の光が届かなくなるため、サンゴと共生している褐虫藻は光合成ができなくなり、サンゴは栄養不足となってしまうのです。もちろん、直接赤土を被ることで埋まってしまうような場合も、サンゴは大きな被害を受けます。

この問題を解決するには、陸地から赤土が流出しないように工夫することです。赤土が流出する源になっている農地などの周囲に、「グリーンベルト(※)」などを設けることで、土の流出を抑え、被害を防ぐことが可能になるのです。現在、WWFジャパンでもそのような取り組みを行っています。

※グリーンベルト=植物を帯状に植えたエリアのこと。植物の根などを土中にめぐらせて、土が雨で簡単に流れないようにする。

サンゴ礁の白化は、年々増えているのですか。

発生の増減は、年によって異なります。サンゴの白化自体は昔からあったそうですが、1998年に起きた世界的なサンゴ礁の白化現象のような規模の大きなものは、以前は発生していなかったといわれています。

また、白保では毎年夏に海水温が高くなると、規模に差はあるものの、サンゴの白化現象が確認されてきました。しかし、現地の漁師などの方々にお話を聞くと、昔はそれほど頻繁に白化現象は起きていなかったといいます。白化は近年、世界各地のサンゴ礁で問題になっており、深刻な状況は白保という地域だけに限った問題ではないといえます。

ほかの自然や野生生物もそうですが、一度被害を受けてしまったサンゴを元の姿に戻すのは、極めて困難です。赤土の流出や、汚染などのリスクを極力発生させないように予防し、サンゴの生命力を弱らせないようすることが、求められている重要な対策ではないかと思います。

「しらほサンゴ村」では、どのような情報を発信しているのですか。

サンゴ礁を守ろうと思ったとき、その主役になるのは地元の人たちです。地域の人たちが、自分たちの暮らしに直接かかわる地域の自然を守ろうという意思を持たなければ、自然保護というものは実現が極めて難しくなります。

白保では幸い、昔から人が海と共生する形で、サンゴ礁を利用しながら生活をしてきました。戦争中でも海の幸のおかげで飢え死にすることなく、生き伸びることができたという話も聞いたりします。まさに、現代の人々にとって大きな課題である「持続可能な社会」が、昔の白保にはあったということです。

そこで、「しらほサンゴ村」では海やサンゴだけではなく、その地域に住む人たちの暮らしを視野に含めた情報発信に取り組んでいます。

例えば、WWFジャパンの職員が地元の学校に行ってサンゴ礁の話をする、地域の方々と海に行って自然を観察するといった取り組みを行っています。これは、地元の人たちにその土地の海のことをより深く理解し、大切にしていこうという気持ちを育んでいただくための活動です。調査活動などへの参加や、その結果についても、地域の人たちの役に立ててもらえるように努力しています。

あくまで、サンゴの保護活動の主体となるのは地域の人たちであり、WWFの取り組みは、それをバックアップすること。実際の活動としてはこうした側面が多いといえるでしょう。

もちろん、問題はたくさんあります。現在、白保の海岸では、新しい空港の建設計画があり、工事による海の自然への影響が懸念されています。

また、スキューバダイビングをしに白保に訪れる観光客のなかにも、ダイビングのマナーを十分に理解せず、サンゴを傷つけてしまう人もいます。サンゴの海を保全していくためには、こうした問題への対応も必要とされています。

「しらほサンゴ村」では実態調査を継続しながら、地域住民や観光客の方々にサンゴ礁の現状を知ってもらい、自然環境に影響を与える開発計画には提言や見直しを求めていきます。活動の内容は実に多岐にわたりますが、どのような活動にしても「人と海とが共存していくこと」が大きなテーマなのです。


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