ミサワホーム株式会社

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新たな概念を盛り込んだ環境活動計画-「SUSTAINABLE2015」

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ミサワホーム株式会社

今回の「エコなニュース」は、「大収納空間『蔵』のある家」でおなじみのミサワホーム株式会社様の取り組みをご紹介。

ミサワホーム株式会社様では、環境5ヵ年計画「SUSTAINABLE(サスティナブル)2015」の策定や環境住宅「ECO Flagship Model(エコフラッグシップモデル)」の開発など、数多くの取り組みをなさっているようです。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。

  • 企画管理本部
    経営企画部
    広報・IR担当部長
    中村様
  • 企画管理本部
    経営企画部
    CSR・環境推進課長
    中田様

早速ですが、よろしくお願いいたします。

環境に関する取り組みを始めたきっかけをお聞かせください。

今でこそ多くの企業で環境問題に対する取り組みが行われていますが、当社で環境関連の専門部署が設置されたのが1996年ごろであり、もう15年ほど(※2011年7月現在)前のことになります。

当社は工業化住宅メーカーということで、自社工場で住宅部材を生産しているのですが、1996年以前に、ISO9000シリーズという品質管理の国際規格を全工場で取得する運動を行っていました。そのような状況がひと段落したころ、環境に関する国際規格ISO14001が発行されるということもあり、その認証の取得に向けて動き出しました。そのときに初めて、ミサワホーム本社内に環境推進部門が誕生したのです。

この部門は、いわばISO14001を工場に取得させるためのプロジェクトのようなものとしてスタートしました。その結果、1997年度に松本工場で住宅業界で初めてISO14001を取得することができました。それ以降、当社でも企業として様々な環境活動に取り組んでいこうという方向性が定まりました。

翌1998年度には、本社の開発部門でもISO14001を取得しました。ISO14001を取得すると、環境方針の設定とそれに伴う情報のディスクローズ(開示)が必要となってきます。そこで、環境報告書を作成し、具体的な目標を掲げて、本格的に推進活動をスタートしました。

ISO14001を取得した1997年に「新・環境宣言」を策定しました。“新”とあるのは、1990年に新聞で「ミサワホームは環境に配慮します」という企業ポリシー広告を出したことがあり、それを当社では最初の「環境宣言」と呼んでいるからです。

そして、翌1998年からISO14001に基づく「中期3ヵ年計画」をスタートし、3年後の2001年からは「新5ヵ年計画」を、さらに2006年からは「SUSTAINABLE(サスティナブル)2010」を策定しました。「SUSTAINABLE2010」は2006年度から2010年度までの計画でしたので、2011年度からは新たな5ヵ年計画として「SUSTAINABLE2015」がスタートしています。

「SUSTAINABLE2015」の具体的な内容をお聞かせください。

わずか2006年から2010年の間でも、生物多様性など新しい概念が登場しています。特に、2010年に名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されたことは記憶に新しいところです。

「SUSTAINABLE2015」には、そのような新しい概念を内容に盛り込み、「CO2の削減」「資源有効活用」「生物多様性保全」「良好な住環境」「社会貢献活動」の5つのテーマで構成されています。

「CO2の削減」では、新築住宅においてはライフサイクルを通じてCO2排出量を1990年度比で25%削減し、既存住宅では省エネ改修の推進を掲げています。

「資源有効活用」は、各地の販売会社であるディーラーや工場において3R活動を推進し、地球環境負荷の低減を図るという内容です。

「生物多様性保全」では、森林生態系に配慮した木材調達と地域生態系の維持に貢献する活動の推進を約束しています。

「良好な住環境」とは、安全・快適な住環境や、景観に配慮した住まいづくり、まちづくりの推進を意味します。

「社会貢献活動」では、地球温暖化の防止や地域社会貢献活動へ積極的に参加することを掲げています。

低炭素社会や循環型社会、自然エネルギーへの転換やゼロ・エミッションなどのほか、従来からいわれていた安全・快適な住環境や景観に配慮したまちづくりといった内容を残しつつ、生物多様性と社会貢献活動を追加しました。

今後リフォームやストック(中古住宅など)へシフトするなかで、既存のストックに関しては、十分な管理ができていなかったという課題がありました。将来的に、それをどのように管理していくかが重要となります。先述したCO2の削減のところでいえば、「既存住宅では省エネ改修を推進する」という形で内容が追加されています。

「CO2排出量を1990年度比で25%削減」とありましたが、チャレンジ25を受けてこのような内容にしたのですか。

そうですね。ただし、チャレンジ25の場合は2020年を目標としていますが、「SUSTAINABLE2015」のCO2の削減は2015年までという点で異なります。チャレンジ25よりも5年ほど前倒しでの目標達成を目指しています。

「SUSTAINABLE2010」でも、CO2排出量を20%削減することを目標に掲げており、1990年度比で18.6%削減することができ、達成までもう一歩でした。残りの5年で6%強の削減を達成すればいいので、実現できるでしょう。

CO2排出量削減の具体的な取り組みとして、「ゼロ・エネルギー住宅」を挙げることができるかと思いますが、その内容ついてお聞かせください。

「ゼロ・エネルギー住宅」というのは、当社が今(※2011年7月現在)から13年前の1998年に初めて発表した概念ですが、大きく普及していくにはまだ時間を要するのではないかと考えています。

2010年までの基本的な路線としては、あくまでも棟当たりのCO2排出量の削減を目指していこうという内容でした。そのための要素として、従来は居住者が生活していくうえで必要なエネルギー(※特に冷暖房)の効率化について、建物自体の断熱性能の改善という形で進めてきたのです。

省エネルギー住宅(次世代省エネルギー基準適合応住宅)の普及の取り組みをスタートした2001年当初は83%ほどの普及率だったのですが、2010年には96%にまで増加しています。「SUSTAINABLE2010」で次世代省エネルギー基準適合住宅の普及はほぼ達成できたといえるので、それに加えて「SUSTAINABLE2015」では「ゼロ・エネルギー住宅」の取り組みを進めていこうという方針になりました。

従来は戸建住宅に絞っていたのですが、「SUSTAINABLE2015」には、集合住宅における断熱性能の改善も含まれています。環境問題に対して関心の薄いオーナー様も多かったわけですが、今後は対応していかなければというように意識が変化しています。その意味では、「SUSTAINABLE2015」は集合住宅への取り組みと(後述する)ECOリフォームがポイントといえるでしょう。

従来よりも大きく改善できる余地がある部分として、太陽光発電を挙げることができます。今ではかなり普及してきましたが、それでも当社の実績としては2010年でようやく30%程度という状況です。

「SUSTAINABLE2015」ではこれを50%ぐらいにまで伸ばすことを目指しており、2010年よりもCO2排出量の削減効果を期待しています。

今では、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュート)などの設備機器の普及率も高くなってきました。家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)などもさらに普及すると予想されるので、それらによっても棟当たりのCO2排出量の削減効果への寄与を期待することができます。

もちろん、工場や現場におけるCO2排出量の削減も進めていきます。ただし、産業部門は頭打ちという状態であり、“棟当たり”の削減目標には生産エネルギーも含めていますが、この分野だけでは大きく削減できるとは考えていません。

今後、当社の環境活動の目標と実績に、「ゼロ・エネルギー住宅」も含めていきたいと思っています。そのため、「SUSTAINABLE2015」では「ゼロ・エネルギー住宅」をどの程度普及させるかという目標は掲げずに、あくまでもトータルにおけるCO2排出量の削減という視点で考えています。

なお、当社の太陽光発電システム搭載住宅の普及率を見ると、2009年から急激に実績が伸びています。やはり、2009年に太陽光発電の補助金制度が復活したのが大きいですね。それに合わせて、当社でも通常の3分の1の価格で設置できるという、太陽光発電システムのキャンペーンを行いました。キャンペーン当初はKW当たり24万円(※)という価格を設定していたので、その効果もかなり大きいといえるでしょう。

※現在はKW当たり30万円(税抜き)。

太陽光発電システム搭載住宅の普及率

「社団法人プレハブ建築協会(プレ協)」では環境行動計画「エコアクション21」という取り組みを行っており、2009年度の実績では、太陽光発電設置戸建住宅の供給比率が39.3%と急激に伸びているというデータが紹介されています(※2008年度は16.4%)。

「ゼロ・エネルギー住宅」といわゆる“省エネ住宅”は、具体的にどのような点が異なるのですか。

省エネルギー住宅というのは、国の平成11年省エネルギー基準(次世代省エネルギー基準)に適合した住宅を意味します。主に住宅の断熱化を内容としているので、建物自体で“ゼロ・エネルギー”を達成することは難しいといえます。要するに、省エネルギー住宅の施策は、断熱性の高い住宅の普及率を伸ばすという位置づけです。

「ゼロ・エネルギー住宅」は省エネルギー住宅をベースに、さらに太陽光発電による創エネルギー技術なども考慮して、トータルで居住段階におけるエネルギー収支をゼロにする住宅なのです。

CO2排出量削減の具体的な取り組みには、ECOリフォームというものもありますね。

ミサワホームでは現在、ECOリフォーム事業を柱にするべく注力している段階です。当然ですが、“エコ”がキーワードとなってきます。

当社では「ECO・微気候デザイン」という考え方を提唱しており、販売する住宅にも採用されています。気候という概念は、人間の力ではどうしようもない「大気候」から「中気候」や「小気候」へと規模が小さくなるわけですが、家の周りや室内といった限られた範囲で、先人の知恵と先端の技術を融合させて住環境全体を設計することを、当社では「微気候」と呼んでいるわけです。

微気候は、家のデザインや工夫によりコントロールすることが可能です。例えば、リフォームにおいても、夏は強い日差しや紫外線をカットするオーニングを設置する、ブラインドを窓の外につけることで室内への熱の侵入を防ぐなどが考えられます。

また、空気の取り入れ口となる地窓と出口となる天窓(トップライト)をつけることで、温度差換気によって2階にこもる熱を外に逃がすことができます。さらに、各部屋に開閉式の欄間をつけたドアを設置することで、プライバシーを守りつつも住まい全体に空気の流れを生じさせることが可能です。

このような環境に配慮した住まいの改修が、ECOリフォームなのです。

実際に、どれくらいのお客さまにECOリフォームのサービスを提供しているのですか。

残念ながら集計途中ということもあり、現状では“エコ”というまとまりで、データを取得することは難しいですね。ただ、住宅エコポイント制度の後押しもあって、ECOリフォームの普及にかなり貢献できたのではないかと思います。

既存住宅において、当社でも省エネ改修を推進していますが、省エネ改修というサービスは、断熱性を高めるなどのエネルギー効率を上げるという観点で提供しています。しかし、断熱性を高めるためだけにリフォームを行うお客様は、残念ながら少ないというのが現状です。

断熱材を入れるのであれば壁を外すことになるので、お客様としては壁紙も新しいものに取り換えたいでしょうし、リフォームするならば家の外壁も今までとは違うものにしたいでしょう。競合他社さんでも、当社のECOリフォームと似たようなサービスを提供していますが、やはり全体のリフォームのなかの一部で環境対応を行っているだけです。本当に環境配慮を前面に打ち出したリフォームというのは、現状ではあまりないのではないでしょうか。


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