先月のエコマガの“おさらい”から
まずは先月のエコマガの“おさらい”をしておこう。「放射性物質」と「放射能」、「放射線」の違いだ。
放射性物質とは、放射線を出す物質のことである。そして、放射性物質の原子が崩壊することにより放出されるエネルギーを放射線といい、放射線を出す能力のことを放射能という。懐中電灯自体が放射性物質、電球から発する光が放射線、懐中電灯の光を発する能力が放射能というように、懐中電灯に例えて説明されることが多い。
ニュース記事などでは、放射性物質と放射能が混同して使われていることもあるので、気をつけたいところ……。
放射能の単位=放射線を出す能力を表す単位として「ベクレル(Bq)」が用いられる。これは、1秒間に崩壊する原子の数であり、1ベクレルで1秒間に1個の原子が壊れていることになる。
放射線にはアルファ(α)線・ベータ(β)戦・ガンマ(γ)線・エックス(X)線・中性子線などといった種類があり、それぞれ物質を突き抜ける力(透過力)は異なる。鉛や分厚い鉄板を透過するものもあれば、紙すら突き抜けないものもある。体内を診察するX線検査は、この放射線の透過力を利用しているわけだ。最も透過力が強いのは中性子線であり、鉛や厚い鉄板でさえ突き抜けてしまうのだが、水で止めることができる。
放射線に関する量を表す単位として、「グレイ(Gy)」と「シーベルト(Sv)」が使われている。グレイは放射線のエネルギーが物質にどれだけ吸収されたのかを表す単位であり、シーベルトは人が放射線を受けたときの影響の程度を表す単位だ。体への影響を把握するには、ベクレルをシーベルトに換算する必要があるが、計算が複雑なのでここでは省略させていただく。
そもそも、自然界には放射線が存在している。星が爆発するときや星が輝くときに宇宙から降り注ぐもの(宇宙線)もあれば、大気中に存在するラドンという放射性物質から放出されているものもある。大地から放出されるものもあり、食物にだって放射性物質が含まれているので、微量の放射線が放出される。
カリウム40という放射性物質は、米や食パンに30Bq/kg、ほうれんそうには200Bq/kg、干ししいたけでは700Bq/kg、干しこんぶになると2,000Bq/kgほど含まれている。
つまり、食事や呼吸によって体内に放射性物質を取り込んでいるわけだ。体内に取り込まれた放射性物質は時間の経過とともに低下していき、新陳代謝によって一定となる。
放射性物質というのはずっと残るわけではなく、時間が経つと減っていく。放射性物質には「半減期」というものがあるのだ。半減期とは、放射性物質が放射線を出す能力(放射能)が元の半分になるまでの期間のことをいう。最初の2分の1、その2分の1、さらに2分の1……というのが繰り返されていく。この半減期は、放射性物質によって異なる。
「ロジウム106」の半減期はわずか29.8秒、「ヨウ素131」の半減期は8.0日だが、「セシウム137」では30.1年にもなる。さらに、「プルトニウム239」は2万4千年、「ウラン238」は45億年という気の遠くなる長さ……。
だが、これは放射性物質が土壌などに残った場合だ。体内に取り込んだときは話が異なる。摂取したヨウ素は甲状腺に取りこまれる性質があり、大量に摂取した場合、確かに甲状がんのリスクは高くなる。しかし、そのほとんどは尿などにより体外へ排出されるので、半減期の8日よりも半分になるのは早く、3ヶ月もすれば体内から完全になくなるようだ。セシウムも同様に、排尿などで100日もすれば半分になるという。
食物などの暫定規制値は、放射性物質を含む牛乳や乳製品を1日1L、水を1日2L、野菜を1日100gなど、それぞれを1年間毎日摂取し続けた場合に健康に害が出る(※発がんなど)放射線量を計算したものだ。この規制値は子どもが摂取を続けても問題がない結果を基に定められている。子どもは大人より放射線の影響を受けやすいというのが理由だ。そのため、規制値以上の放射性物質を取り込んだとしても、身体的な影響は表れるわけではない。ただし、できる限り放射性物質は摂取しないほうがいい。野菜などは、葉の隙間もよく水で洗うことをおすすめする。
普通に暮らしていても、自然放射線を年間平均で2.4ミリシーベルト(=2,400マイクロシーベルト(※))浴びている。これに加えて、健康に害がないとされる年間の許容限度は、「自然放射線以外で1,000マイクロシーベルト」とされている。
※1,000マイクロシーベルトで1ミリシーベルトになる。
胃のエックス線検査では600マイクロシーベルト、実は、CTスキャン(※)となると6,900マイクロシーベルトも浴びてしまう。ただし、検査などの明確な理由がある場合には、許容限度とは別に考えられるようだ。
※CTは「Computed Tomography」の略であり、コンピュータ断層撮影法のこと。
大気や大地からも放射線は放出されていると述べたが、地域によって、放射性物質の量は異なる。実は、関東のほうが関西よりも放射線の量は低い。その理由として、関東ローム層の存在がある。マグマの冷えて固まった花崗岩が多い地域では放射線量が高くなるのだが、関東ローム層の地域は火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)に覆われているので放出が遮られているわけだ。
資源エネルギー庁のデータによると、自然放射線の年平均値が一番高いのは岐阜県(1.19ミリシーベルト)で、一番低いのは神奈川県(0.81ミリシーベルト)と、約1.5倍もの差があるという。日本全体の年平均値は、0.99ミリシーベルトだ。日本の場合、北海道・東北地方・関東地方は自然放射線量が比較的に低い地域であり、近畿地方や四国地方(※徳島県を除く)は比較的に高い地域となる「西高東低」という傾向がある。
ブラジルの南東岸ではモナザイトという鉱物が土壌に多く、日本の約10倍、世界平均(約2.4ミリシーベルト)の約4倍の、年平均10ミリシーベルトの自然放射線量となっている。自然放射線量が高い地域で生活すると、人体への影響が心配されるが、調査を行ったところ、生まれる子供の性別の比率・先天性異常・流産・乳児死亡・出産率などにおいて、ほかの地域と大差がないという結果になった。
地域だけでなく、高度によっても自然放射線量は異なる。地上から高くなるほど、宇宙から降り注ぐ自然放射線量は多くなるからだ。1万メートル以上の高度になると、地上の約150倍もの量が降り注ぐという。東京~ニューヨーク間を飛行機で往復した場合でも、0.2ミリシーベルトの放射線を浴びることになる。
さて、放射線は人体にどのような影響を及ぼすのだろうか。人体組織は細胞が集まってできているわけだが、細胞はたんぱく質などの化合物から構成され、それらは突き詰めていくと、あらゆる物質の基である原子からできている。
放射線が細胞に当たると、原子と原子のつながりからなる分子が傷ついてしまう。これにより細胞が壊れたり、遺伝子の組み換えによる異常(突然変異)が生じたりする。遺伝子の突然変異は、将来的にはがん細胞が生まれる原因にもなる。
物質を構成する原子は「原子核」を中心に、その周りをマイナスの電気を有する「電子」がまわっている。原子核にはプラスの電気を有する「陽子」があり、電子と陽子の数は同じだということは先月のエコマガでも説明した。
しかし、放射線が当たると、電子は原子の外へと飛ばされてしまう。原子はマイナスの電気をもつ電子と、プラスの電気をもつ陽子に分かれてしまうわけだ(※これを「電離」という)。そして、放出された電子はさらにほかの原子に電離を生じさせていく。このように、放射線は体を構成する原子を電離させることで細胞や遺伝子を傷つけていき、身体組織や臓器が悪くなると、様々な病気を引き起こすというわけである。実は、新しい細胞を作るために分裂を繰り返している細胞ほど放射線の影響を受けやすい。皮膚を作る細胞や血液成分を作る骨髄の細胞が放射線の影響を大きく受けるのは、このような理由による。
ニュースなどでは詳細な情報が明かされていないのではないかと不安になることも多いが、それらに惑わされることなく、まずは正確な情報かを冷静に判断し、的確に行動することを心がけたい。
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