口蹄疫って何が問題となっているの?
口蹄疫(こうていえき)とは、主に牛や豚などの四肢の指の数が2本または4本で、蹄(ひづめ)を有する偶蹄類(ぐうているい)の動物が感染する、ウイルス性の伝染病のことだ。
ちなみに、2000年にも宮崎県と北海道で口蹄疫が発生したのだが、感染した動物の数が少なく、迅速な対応がなされたこともあり、ウイルスのいない清浄国への復帰を果たしている。
“口蹄”とあるように、口の周辺や蹄(ひづめ)に水疱(※水ぶくれ)ができ、発熱による衰弱や、水疱が破裂した際の痛みによる歩行障害も見られるのが症状の特徴だ。成畜であれば死亡するケースは少ないのだが、幼畜では高い致死率を有する。残念ながら、現在は有効な治療法がない。
人に感染することはなく、感染した牛や豚の肉を食べたり、牛乳を飲んだりした場合でも口蹄疫にかかることはないとされる。
だが、偶蹄類間での口蹄疫ウイルスの伝染力は非常に強く、感染が広がることを早急に防ぐため、家畜伝染病予防法に基づいて、感染した動物や同じ農場内の動物は、全て隔離や殺処分されたあとに埋却することとなっている。さらに、埋却後も3年間はその場所を掘り返すことが禁止されている。また、感染地周辺の動物の移動についても制限される。畜産業における経済的なダメージはかなりのものだ。
体液や糞便に含まれるウイルスに触れるのはもちろん、ウイルスが付着した粉塵が風に乗って運ばれることで空気感染もする。英国で発生した口蹄疫ウイルスが、ドーバー海峡を超えてフランスの家畜に感染したという事例もあるほどだ。人に感染しないとはいえ、服や体にウイルスがついたまま移動すれば、ほかの動物への感染する恐れがあるので注意が必要である。
口蹄疫と同様に、牛の病気として話題になったものにBSE(Bovine Spongiform Encephalopathy)がある。牛海綿状脳症、つまりは狂牛病のことだ。これは、牛の脳に空洞ができて、スポンジ(海綿)状になる病気だ。口蹄疫は口蹄疫ウイルス(Picornaviridae Aphthovirus)が病原体とされるが、BSEは異常プリオン(※異常プリオンで汚染された飼料)が原因ではないかと推測されている。BSEは、口蹄疫と比べても動物間の感染力は弱い。また、口蹄疫の場合には感染した牛や豚の肉を食べたり、牛乳を飲んだりしても人にうつることはないが、BSEでは牛の頭部や脊髄などのSRM(specified risk material/特定危険部位)が含まれた部分を食べるとうつる恐れがある。
どちらも、感染した動物に近づくだけではうつることがないという点は共通だ。ただし、口蹄疫の場合、服や体にウイルスがついてほかの動物への感染源となりうることは先述のとおり。
さて、口蹄疫の対策としてワクチンを接種するという選択肢もあるのだが、話はそう単純ではない。口蹄疫ワクチンを打つことで、確かに発症を抑えることは可能だが、感染を完全に防ぐことはできない。ワクチンを接種した動物は口蹄疫に感染しても症状を示さないため、実は感染していてもそれを見逃してしまい、移動させることで口蹄疫が広がる恐れがある。そもそも、感染した動物とそうでないものとの区別が難しく、ワクチンが投与された個体が生存している間は輸出相手国が輸入を許可しないケースも多い。そのような理由から、ほとんどの場合には殺処分するという選択がなされているのだ。ただし、今回の宮崎県のケースでは、感染が予想を上回る早さで拡大しているため、口蹄疫のワクチン接種を実施している。感染拡大の速度を遅らせる効果はあるものの、感染を見逃す恐れがあるため殺処分されることには変わりがない。
口蹄疫が蔓延すれば畜産業界に与える打撃は大きく、口蹄疫の発生国では牛や豚の輸出ができなくなるため、経済的な被害は深刻なものとなるわけだ。
現在(※2010年5月の時点)、宮崎県で発生している口蹄疫は被害の拡大を続けており、非常事態宣言を発令するまでになった。今回の口蹄疫ウイルスがどこから来たのかについては、現在調査中だというが、感染経路を特定することは非常に難しい(※アジアから運ばれてきたという見解が有力のようだ)。一刻を争う問題であるため、1日も早く沈静化することを願う。
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