トキの絶滅について考えるとき
トキの学名は「Nipponia nippon(ニッポニア ニッポン)」という。その学名のとおり、日本を代表する鳥であった(※国鳥ではない)。その日本を代表する鳥が、絶滅の危機に瀕しているのはご存知かと思う。
トキというのは、動物界・脊椎動物門・鳥綱・コウノトリ目・トキ科・トキ亜科に分類される(さっぱり覚えられん……)。実は1種のみでトキ属「Nipponia」を構成し、日本以外に生息するトキも完全に同一の種と考えられている。つまり、日本と中国のトキは同じ種類であり、「○○産のトキ」という区別をする必要はないということらしい。そのため、両国が協力してトキの保護に取り組むというニュースが報じられるが、これはとても意味のあることだといえるのだ。
一般に似た動物を区別する場合、体の大きさ・形・色・構造などに注目するのだが、環境省が日本と中国のトキの個体について遺伝的系統関係解析調査を実施したところ、両者は同一の種であることが判明した。
野生では、ドジョウ・フナ・オタマジャクシ・カエル・イモリ・タニシ・ミミズなどの小動物を主食とするが、米粒や小豆といった植物を食べることもあるという。人工飼育の場合には寄生虫の問題もあり、主にダンゴ状の配合飼料が与えられている。
トキは「ターア、ターア」と大きな声で鳴くということだが、その寿命は10年~15年ほどではないかといわれている(調べていないので正確な寿命は分からないようだ)。
トキというのは、外見で雌雄の判別をするのは困難だという。それならばどのようにして区別しているのか、疑問に思う人も多いことだろう。佐渡トキ保護センターでは、ふ化したヒナの卵の殻に付着している細胞、あるいはヒナの血液を採取し、DNA鑑定により判別を行っている。
トキは、19世紀から20世紀初頭には中国・ロシア・朝鮮半島・台湾・日本など、東アジア一帯に広く分布していたようだ。日本には古くから見られた鳥であり、その名前は「桃花鳥(ツキ)」という表記で「日本書記」にも登場しているという。桃花鳥というのは朱鷺色と呼ばれる羽色に由来したものとされ、“トキ”という名称は“ツキ”の音が転じたものともいわれている。
また、江戸時代の末期には長崎のオランダ商館で医師として働くドイツ人のシーボルトが、オランダにトキの標本を持ち帰っていた。それを当時ライデン博物館の館長テミンクが研究し、1835年に「Ibis nippon」の学名で世界に紹介したが、1853年にライエンバッハによりNipponia属が設けられ、現在ではこの学名が用いられている。
明治時代(19世紀後半)にはトキの美しい羽毛を求めて乱獲され、さらに地域によっては農家から水田を荒らす害鳥として嫌われており、農薬による中毒などでその数が激減した。そのため「保護鳥」の指定を受けたが、大正時代末期(1920年代後半)には絶滅したとみなされていた。
だが、昭和時代初期にはわずかながら生息が確認され、1934年(昭和9年)に「天然記念物」の指定を受ける。
しかし、1945年(昭和20年)以降はその数が30羽ほどに激減。1952年(昭和27年)「特別天然記念物」の指定を受けるが、環境悪化による生息地の減少は止まることなく、各地で絶滅が確認される。1970年(昭和45年)に、石川県の能登地方に生息していた1羽を新潟県の「佐渡トキ保護センター」に移し、1981 年(昭和56年)には佐渡島にいた5羽を人工繁殖のために捕獲。これにより、国内における野生のトキはいなくなった。
佐渡島で放鳥されているトキのペアが、卵を巣外に放り出してしまったニュースは残念だった。ふ化する可能性のない無精卵や、有精卵でも育たないと判断した場合、トキは卵を捨てることがあるという。トキの野生復帰というのは、なかなか難しいようだ。
今年は国際生物多様性年であり、政府では生物多様性基本法に基づく「生物多様性国家戦略2010」が閣議決定された。内容にはトキの野生復帰についても触れている。これを機に、トキについて知っておくのもいいだろう。
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